【書評】 『キリスト教 どうとく 副読本』(1・2年、3・4年、5・6年) 鈴木崇臣

 小学校では今年4月から、中学校では2019年度から、これまで「教科外活動」だった「道徳の時間」が「特別の教科」となり、検定教科書を使用した授業と、文章による成績評価が始まる。

 こうした公教育の流れに対応すべく、キリスト教独自の「副読本」が必要だと作られたのが本シリーズ。50年以上、牧師として働く傍ら多くの著書を手がけてきた著者が、「キリスト教こそ、道徳が得意分野なのではないか」との思いから、キリスト教倫理の授業を担当した自身の経験も踏まえ個人で執筆を重ねてきた。

 聖書を題材とした物語を含め書き下ろしの訓話を収録。伝記ではヘレン・ケラー、ベートーベン、シュバイツァー、新渡戸稲造、長谷川保などの信仰面に焦点を当てつつ、偉人らの成功した側面だけではなく、失敗や弱さにも言及する。

 教科化の動きについて著者は、「正直、親切、自律、おもいやり、公平、友愛、節制、忍耐など多くの徳目に関しては、表現方法は別にして(キリスト教倫理との間に)大きな相違点を見いだすことはできない」と楽観的である。

 確かにキリスト教学校において、具体的な教材の開発という意味では遅れを取った感があり、「宗教をもって前項の道徳に代えることができる」とする学校教育法施行規則の適用が許されなくなった場合の対策は十分ではない。

 しかし、「そもそも『道徳』を唯一絶対の価値観として教え、評価することが可能なのか」との懸念は否めない。戦前の修身教育が犯してきた過ちをどう克服できるのか。大人の顔色をうかがいながら、望まれる答えと社会的評価を表面的に取り繕う知恵を身に付けさせることに、どんな意味があるのか。「神道は宗教にあらず」として国民を扇動してしまった歴史を思い起こしつつ、真の意味で「心」を育てるために、何が必要かを再考・議論するための契機としたい。

【本体800~1,000円+税】
【燦葉出版社】9784879251312

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