【書評】 『英国聖公会宣教協会の日本伝道と函館アイヌ学校』 田辺陽子 編/西口忠 著/フィリップ・ビングスリー 監修

 1894(明治27)年に、英国聖公会宣教師の父ベアリング・ベアリング=グールドと共に23歳で日本を訪れ、カメラを手に日本中を旅したエディス・ベアリング=グールド(1871~1961)。
 本書は英バーミンガム大学キャドバリー研究図書館に保管されている資料から73点を収録し、解説を施した写真資料集。

 函館から熊本まで日本をくまなく旅したエディスだが、紀行作家として有名なイザベラ・ルーシー・バード(1831~1904)と異なるのは、日本の宗教と信仰のあり方に関心を寄せていたエディスの旅は、観光目的ではなかったことだという。

 約50日に及ぶ日本滞在の間に、エディスは徳島でハンセン病患者を受け入れていたと推測される永生教会や、1895年に開院したばかりの同じくハンセン病の熊本回春病院、また国立療養所菊池恵楓園などを訪れている。熊本回春病院では同病院開設者で今もその名が残るハンナ・リデルに案内されて見学したという事実も興味深い。

 最もページを割いている函館アイヌ学校(1893~1905)は、校舎や集合写真だけでなく、生徒たちのスナップ写真、農作業授業風景、ホッケー・サッカーチームなど、当時の学校生活も見て取れる。

 巻末には「明治時代の英国聖公会宣教協会の北海道伝道とアイヌ教育」についての編者・田辺氏による論考を掲載。1895年の同校の時間割には、新約・旧約聖書、日本語、アイヌ語、算術、理科、音楽などがあり、高度な教育が行われていたことが分かる。1901年に日本政府が「旧土人児童教育規定」を制定し、「特設アイヌ学校」を設置した。その陰で消えていった伝道師による学校の姿は、貴重な歴史研究と言えるだろう。

 1世紀以上前の写真だが画質も良く、当時の様子が手に取るように感じられる。

【本体2,600円+税】
【春風社】9784861105807

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