【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『追跡・アメリカの思想家たち』 会田弘継

『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書、2008年)

 「冷戦が終結を迎えた当時、社会主義超大国ソ連と対峙したアメリカを支えた思想は何なのか」。著者は、戦後アメリカ保守主義思想の原点を求め、アメリカ・ミシガン州の深奥部、メコスタ村にラッセル・カーク博士を訪ねる。博士は湾岸戦争に徹底的に反対し、「ナショナリズムこそ保守主義の敵だという大前提」を持つ人だった。

 共同通信ワシントン支局記者に始まり、現在は同社の客員論説委員を務める。本書の後に『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫、2016)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社、2016)、『破綻するアメリカ』(岩波現代全書、2017)を上梓した。現代アメリカを見つめてきた人である。

 第三章「キリスト教原理主義」では、神学者J.グレシャム・メイチェンを引用している。「事実というものの優位は〝動かし難い〟ということだ……新しい事実は見つかるかも知れない。キリスト者は新事実の発見を心から歓迎するのにやぶさかでない。しかし、古い事実は、本当に事実であるなら、時の終わりを超えて事実として残る」

 会田は、この言葉から小林秀雄との思想的近似を発想し、「ジョナサン・エドワーズ伝」で有名なジョージ・マースデン博士らを、メイチェンの思想的後継として紹介した。

 他には、ネオコンの始祖としてノーマン・ポドレッツ、南部農本主義リチャート・ウィーバー、ネオコンが利用した思想としてレオ・シュトラウス、ジャーナリズム関連でH.L.メンケン、リベラリズムとしてジョン・ロールズ、リバタリアンとしてロバート・ノジック、共同体主義からロバート・ニスベット、保守論壇の創設者ウィリアム・バックリー、近代との関わりで、フランシス・フクヤマについて語る。エピローグ「戦後アメリカ思想史を貫いた漱石の『こころ』」も味わい深い。

 現代米国保守思想を知るために再読したい1冊だ。

【本体1,100円+税】
【新潮社】978-4106036187

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