【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『21世紀の宗教研究』 マイケル・ヴィツェル、芦名定道、長谷川眞理子、井上順孝

『21世紀の宗教研究 : 脳科学・進化生物学と宗教学の接点』(平凡社、2014年)

 「宗教はいつ頃、そしてなぜ生まれたのか?」「なぜ世界にはこのように多様な宗教があるのだろうか?」

 魅力的かつ普遍的な問いかけから始まる本書は、2013年に國學院大學日本文化研究所と日本宗教学会が共催した「ネットワークする宗教研究」と題された講演会を加筆修正したものである。

 執筆陣は第一線で活躍する学者たちであるが、非常に読みやすい。例えば、ハーバード大学で比較神話学を講じるマイケル・ヴィツェル氏は語る。「もしある神話あるいは神話体系が力を失ったならば、別のものがそれにとって代わる。例えば、映画『スター・ウォーズ』の背後には、現代の神話が横たわっているのが見てとれるのである。これには、神話学者ジョーゼフ・キャンベルの影響がある。そしてもっと人気があり、もっと知的な映画『スター・トレック』にも現代の神話が見てとれる」。本文横に人名や事項についての短い解説を附しているので、初心者でも読めるように配慮されている。

 本書は四つの論考を収録。編者でもある井上順考「宗教研究の新しいフォーメーション」は、現代の宗教研究を俯瞰し、その問題点と分野を明らかにする。マイケル・ヴィツェル「神話の『出アフリカ』――比較神話学が探る神話のはじまり」は、遺伝子研究や進化論から、言語以前の神話にまでたどろうとする意欲的な内容だ。長谷川眞理子「進化生物学から見た宗教的概念の心的基盤」は、進化生物学や認知科学から刺戟的な視点を読者に与える。芦名定道「脳神経科学と宗教研究ネットワークの行方」は、脳神経科学、技術革新、脳と心、宗教という現代的な課題を社会脳(ソーシャルブレイン)から論じる。

 なお本書の元になった講演会はスカイパーフェクTVでも一時間番組として放映(2013年10月13日)され、多くの視聴者を得た。科学世紀ともいわれた20世紀を超えて、宗教とテロの時代といわれる21世紀を迎えた今だからこそ、再読したい1冊だ。

【本体2,400円+税】
【平凡社】978-4582703306

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