【書評】『カルトからの脱会と回復のための手引き』 日本脱カルト協会(JSCPR)編

豊富な事例を盛り込んだ集大成

 春―大学でさまざまなサークル団体が勧誘活動を繰り広げる入学シーズンは、多くの学生が「カルト宗教」の危険に最もさらされる時期でもある。「オウム」以後、宗教離れの一方で現出した「スピリチュアリティ」ブームや、それに便乗した団体、商法は後を絶たず、入信者家族らの悲痛な訴えも止むことはない。

 発足以来14年間にわたり、「カルト」からの脱会支援や脱会者のケアに奔走してきた「日本脱カルト協会」(JSCPR)が、蓄積してきた研究と経験をまとめた「カルト」対策の集大成である。なかでも、キリスト教系、仏教系、自己啓発系の諸団体に入信していた脱会者や、その家族による貴重な証言の数々は、今も脱会できずに苦しむ本人、家族、救出にあたる支援者、予防策を講じる大学関係者らにとって大きな助けになるに違いない。

 浅見定雄氏(東北学院大学名誉教授)をはじめ、牧会者としてこの問題に関わり続けている杉本誠、竹迫之、志村真(いずれも日本基督教団牧師)の各氏らも執筆者として名を連ねる。

 特に編集委員長を務めた平岡正幸氏は、日本福音ルーテル教会の牧師として、統一協会やオウム真理教からの救出支援や脱会者へのカウンセリングに長く携わってきた。同氏はあとがきで、「若者たちが破壊的カルトへの警戒心を持つように啓発する必要を近年特に強く感じます」とし、この間に見えてきたこととして、「脱会支援のあり方は、家族がいかにしてコミュニケーションを構築できるか、に尽きる」「それゆえに……対応のあり方は同じ」「脱会後の本人を支える支援がさらに重要」の3点を挙げている。刊行後間もなく天に召された同氏の、遺言とも言える問題提起として受け止めたい。

 巻末資料の「集団健康度測定目録」(下の表)には、どきりとさせられる。この間、「正統な」キリスト教を名乗る教会や聖職者が起こしてきた諸々の「事件」を見るにつけ、決して他人事ではないと思わざるを得ない。むしろ自らの襟を正しつつ、「魂」の問題を扱う職業人として、自己点検のためにも読んでおきたい1冊だ。

【本体1,900円+税】
【遠見書房】9784904536827

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