【書評】『自立と共生の場としての教会』 北村慈郎

 「時の人」がたどり着いた教会論的命題から4年ほど前、私は北村慈郎牧師から雑誌『福音と世界』へ寄稿を申し込まれて断ったらしい。「らしい」と言うのは、実はよく覚えていないからだが、「引用が多い」との理由だったという(北村牧師による)。私は、いや編集者は誰だって、引用文が多くてゴタゴタした原稿は嫌いだ。だから私がそう言った可能性は十分ある。

 実はその文章「戦責告白について」が今度の本に収録されている。今回改めて再読し、どうしてこれをボツにしたのかと自らの不明を恥じた。引用文が多いのは事実だが、新任教師オリエンテーションという場で語られた教育的な発題として、基本的な資料・文献を紹介しながら、問題の核心をよく押さえている。また率直でもある。「福音主義教会連合や連合長老会や改革派の考えによって教会形成をめざしている人たちには教会形成の方法論があると思います。(中略)社会的な問題に関心を持っている教会よりも(中略)ある意味では教会の基盤をつくっていると思います」と述べた上で、それは何故かと言うと、「戦責告白を担っていこうとしている者が、それを各個教会の中でどういう風に展開していくのかという方法論が確立されていないからだと思います」と自己批判的に書いている。まさにこの方法論をめぐって北村牧師は苦労してきた。罪責を告白する教会の形成、言い換えれば「常に改革される教会」を抽象的にでなく具体的に形成していくという課題にほかならない。

 北村牧師は、本誌の読者ならよくご存じの経緯によって「聖餐論争」の渦中の人、時の人となった。しかし、北村牧師を時の人にしたのは本人ではなく教団執行部である。牧師自身は、地を這うような牧会者としての歩みの中で今日の結論に至ったのだ。しかしそれは「自立と共生の場」という大きな教会論的命題の一つの系に過ぎない。本書によって大きな命題がもっと論議されることを編集者として願っている。(こばやし・のぞむ=新教出版社社長)

【本体1,800円+税】
【新教出版社】9784400324447

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