【書評】『聖☆おにいさん』3 中村光

宗教者を巻き込んだ論争に?

 全国3000店の書店員が選んだ「2008年絶対に読んで欲しい漫画ベスト50」(『オトナファミ』エンターブレイン)で1位、『このマンガがすごい!2009』(宝島社)の「オトコ編」ランキングでも1位に輝いた人気シリーズ最新巻。下界で休暇中の〝最聖〞コンビ、イエスとブッダが東京・立川のアパートで共同生活-という奇想天外な設定とキャラクターで、これまでの〝聖人〞像を覆した、まさに「掟破り」のギャグ漫画。手塚治虫の『ブッダ』を愛読する倹約家のブッダと、ブログに日記をつづる新しいもの好きのイエス。世間離れした二人の生活感あふれた日常が「ゆるい」笑いとともに描かれる。今回は東京を離れ、はるばる伊豆へ温泉旅行。さらに、イエスを取り巻く新キャラも……。

 07年からモーニング増刊『モーニング2』(講談社)で連載がスタートして以来、口コミで評判が広がり、今や宗教者をも巻き込んで大きな話題を呼んでいる。ネット上には聖句を引用した「元ネタ集」や、より楽しむための「参考書」として宗教関連書籍を紹介するサイトまで登場した。

 作者の中村光さん自身、信者でもなければ研究者でもないが、趣味で宗教画を描くという陶芸家の父の影響で幼い頃から聖書にもよく触れていたため、マニアックな小ネタが満載。場所が場所なら大問題ともなりかねないが、信者以外にも広く受け入れられているのは、やはり諸宗教が共存する日本ならでは。

 かつて『キリスト新聞』クリスマス特集号(08年12月25日付)で「究極の宗教間対話」と題して中村さんへのインタビューを掲載した際には、読者の間で同作の評価をめぐり議論にもなった。その反応は、「フィクションとして楽しむべき」というものから、「本質なきイエス像とブッタ像に不快感を覚える」「信仰や教祖を笑いの対象材料とすることは、信仰者の人格やアイデンティティーの否定につながる」という厳しい意見まで実にさまざま。果たしてあなたは、笑える? 笑えない?

『聖☆おにいさん』イエスとブッダが共同生活? 信徒ファンも急増中 〝究極の宗教間対話〟 2008年12月25日

【本体552円+税】
【講談社】9784063727845

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