【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『2001夜物語』 星野之宣

『2001夜物語』新装版(双葉社、2009年)

 マンガ作家、星野之宣の本作『2001夜物語』はオムニバス形式のSF短編集である。当然ながら『千一夜物語』とアーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』を背景にして、宇宙開拓時代を迎えた人類が、半径150光年へと踏み出していく物語である。1984年から2年間、『月刊スーパーアクション』(双葉社)で連載された後、ラジオドラマ化、アニメ化され、英語圏のみならず翻訳されて世界中で読者を獲得した。

 特に『悪魔の星』では、ローマ教皇の勅命を受けたラモン神父が宇宙飛行士となり、太陽系の果てにある新惑星へと旅立っていく。科学者として、神学者として、人間として、新しい発見とどのように向き合うべきか。コペルニクス、ガリレオに連なる発見の喜びと苦悩が彼を襲う。

 宇宙創造の象徴的意味、原罪とは何か。開発技術は悪なのか。宗教と科学がせめぎ合う時代の果てに、人類はどうなっていくのか。J.ミルトンの「失楽園」になぞらえて圧倒的な画力と緻密な設定で立ち上がるハードSFである本作は、普遍的な主題を問うている。

 星野之宣は、日本が誇るSFの想像力だ。J.P.ホーガン『星を継ぐもの』、いわゆる「巨人シリーズ」の漫画化を担当した作家として広く世界に知られる。またはTBS系TVドラマ「宗像教授の伝奇考」シリーズの原作作家として名前を知る人もいるだろう。2016年には大英博物館の現代を代表するクリエーターとして取り上げられた。

 創造と進化、宇宙と人間、信仰と科学、時間と空間。普遍的な課題を問わざるを得ない今だからこそ、手に取り読みたい1冊。

【本体600円+税】
【双葉社】978-4-575-72729-6

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