【書評】 『神さまイメージと恵みの世界』 川村従彦

 同じ聖書を読んでいるのに、「神さまは厳しい『裁判官』だというところばかりに目が留まる人もいれば、神さまは愛にあふれた『父』であるというところばかりに目が留まる人もいます。どうしてこのような違いが出るのでしょうか」。

 筆者は、この違いは人がそれぞれ心の中に取り込んだ「神さまイメージ」に差があるからだという。この「神さまイメージ」が幼少期の愛着と関連があることに焦点を合わせ、主に精神分析理論、対象関係論、愛着理論という三つの理論背景の中で研究されてきたのが「神さまイメージ論」である。

 本書は、心理学理論と研究者たちが考案したさまざまな「尺度」を用いながら、人が抱く神さまイメージのあり方を調査し、さらに神さまイメージと他のさまざまな要素との関係(神さまイメージと親の養育態度との関係、神さまイメージと人間関係づくりの傾向など)を研究した結果をまとめたもの。結論として、その人の抱いている神さまイメージと、親との関係、その人の社会性、パーソナリティの傾向などの間には関連があると言えるという。

 著者が集計した記入式アンケートの結果からは、人は何歳から神を心の中に抱くか、クリスチャンホーム育ちであるかどうかで差はあるのか、心に取り込んだ神さまイメージはどのような変化のプロセスをたどり、そこでどのような気づきを得、その後、どのようなステップに進むかについて解説がなされ、その先に訪れるだろう神の「恵みの世界」への希望が語られる。

 神イメージとその人の内面の変化の速度や様態は多様ではあるが、多くの人は変化の中で「神のかたち」としての尊厳を取り戻し、「恵みは向こう(神)から来る」という信仰に活かされ、福音による自由を得るようになるという希望である。臨床心理士としての立場から書かれた本ではあるが、神さまイメージを通しての気づき、自己洞察、恵みへと至る過程は、キリスト教におけるデボーションや観想と言われる営みにも似ているのかもしれない。

 なぜ神を信じているのに安心感が得られないのか。なぜキリストを信じているのに裁きに怯えてしまうのか。「神は愛なり」という言葉を信じているのに、なぜ信仰生活がこんなに息苦しいか……。そんな悩みを抱えている人に、ぜひ読んでほしい1冊。

【本体1,000円+税】
【いのちのことば社】978-4264039150

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