【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『戦時下のキリスト教――宗教団体法をめぐって』 キリスト教史学会 編

『戦時下のキリスト教――宗教団体法をめぐって』(教文館、2015年)

 1939年は、日本語キリスト教にとって決して忘れ得ないものだろう。なぜならば「宗教団体法」が交付されたからだ。巻頭言いわく「これまで宗教団体法については、個人の記録や個々の今日はに関する研究が出版されてきましたが、このように日本基督教団、カトリック教会、正教会、聖公会、ホーリネスの研究者が一堂に会して議論を交わしたことは、おそらく初めて」となったキリスト教史学会シンポジウム(2014年9月、同志社大学)の成果報告である。

 日本基督教団は、文部省に「信仰問答」を作成して提出するも「認可を得られず、創造神と天皇との関係では天皇に対して不敬に値すると指摘され、キリストの復活の信仰では『幼稚で奇怪な迷信』と一蹴され、文部省から削除訂正を迫られた」。また「カトリック教会では靖国神社参拝を『愛国心』の表れとして神社参拝を受け入れること」になり、正教会においては、元神学校校長・瀬沼恪三郎がソヴィエト大使館員に日本語を教えていたことからスパイ容疑で逮捕。聖公会は、日本基督教団への合同の是非によって分裂し、非合同派は秘密結社の汚名を着せられ逮捕者が出た。ホーリネスにおいても「再臨信仰」が治安維持法に抵触し、国体を否定するとして130人を超える検挙者が出た。

 歴史学者たちによって、日本語キリスト教の「戦時下」の記録が浮き彫りになる。政治と宗教、国家と教会。政教分離、表現と内心の自由、約80年前の教会が経験した問題は、そのまま現代的課題として読者に迫る。本書の価値は、教会史という枠組みを超えて、近現代史の事例研究としても意味を持つだろう。21世紀における世界的兆候としての宗教右派、ナショナリズムの台頭、強権的で独裁を強める各国政府、本書が明らかにした「歴史」は、我々の経験となるかもしれない。

【本体2,200円+税】
【教文館】978-4764269927

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