【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『霊魂不滅観』 下村孝太郎

『霊魂不滅観』(大隣社、1939年)

 著者・下村孝太郎(1861-1937)は、同志社・第6代社長。新島襄に請われて、1904年3月から足かけ3年ほど、社長として働き、神学校と専門学校を開講、同志社大学の基礎を築いた化学者である。

 本書の第三版には、大隈重信のブレーン、吉野作造の思想的源流である、浮田和民(1859‐1946)が序文を寄せている。いわずと知れた、熊本バンドの一人だ。同志社英学校の卒業生でもあり、早稲田大学の高等師範部長を務めた。その浮田によれば、本書を独自のものとしている特長は3点。

 第一は、下村の経歴にある。もともと「熱誠な佛教信者」であった下村は、L.L.ジェンズのもとで回心してのち、科学者として大成するも、1914年8月、化学実験中に顔面に大火傷を負い、53歳で完全に視力を失った。

 結果、読書も実験もままならぬ下村は、若き日の研究テーマから宗教の問題を考えるに至った。つまり、本書は当時第一線で活躍する科学者が宗教について思索を深めた結果なのだ。第二は、当時の物理学の最先端の発見として、分子、原子、電子の解説が掲載されていること。特長の第三は、霊的実在をエーテルに求めた心霊科学とは一線を画して、冷徹な科学的態度に基づいた記述である。

 「我なお余命あるべし、いかにしてこの余命を送らん」と悩んだ下村は、人情、宗教、哲学、科学の各観点から、宗教的精神に充溢した科学者として「霊魂不滅」の問題に切り込んでいく。初版は1922/大正11年に出版され、二版を数えた。著者の死後、修正を加えた第三版が、1939/昭和14年に発行された。また本書の校正は、松山高吉が友情から買って出たという。「大正生命主義」とキリスト教をつなぐ歴史的書物。なお「霊魂不滅観」は国会デジタル図書館で読める。

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1106938

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【大隣社】

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