【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『東方キリスト教の歴史』 アズィズ・S. アティーヤ 著 村山 盛忠 訳

『東方キリスト教の歴史 』(教文館、2014年)

 出版当時、本書は、日本語で読める初めての包括的な東方諸教会に関する文献だった。原著出版が1968年、邦訳が2014年。近くて遠い、中近東の教会と日本語をつなげた訳者・村山盛忠は日本基督教団の牧師であり、特に1964年から1968年まで、エジプトのコプト福音教会協力牧師として奉職した人物である。ほかに中東教会協議会との共著『中東キリスト教の歴史』(日本キリスト教団出版局、1993年)や、エジプト生活の顛末を描く名著『コプト社会に暮らす』(岩波書店、1974年)がある。

 「本書の特徴は、著者自身がコプトのキリスト教徒であり、中東世界に立脚した歴史家としての視点をもって著していること(中略)本書の方針として、『宗教の出来事が世界の新たな動きに果たす歴史的要因を重視』(序文)したと述べているが、各部ごとのイスラーム到来期の記述は、そのひとつといえよう。教会の制度的、文化的側面(組織、儀式、美術、建築、文学)を取り上げている(中略)今日イスラームの原理主義が異質な思想として流布されている現状にあって、本書からの一文を引用するのは決して無駄ではなかろう」

 訳者である村山盛忠は、このように述べて、著者アズィズ・S. アティーヤのことばを引用している。「一方でキリスト教徒が先祖伝来の宗教を堅持しても社会かや国家から何も得るものもなく存在し、他方でイスラームがキリスト教徒の無力さを自発的にカバーし、社会的に高い職責や特権を制限することなく提供した事実を知るとき、これはもはや奇跡としか言いようがない」

 「西洋のバタくさい宗教」という表現も古くなり、キリスト教が本来的に中東の宗教であることが認知され、グローバルであることが経済戦争とテロと紛争を意味することが明らかになった21世紀、著者と訳者の思いは色褪せることなく響いている。

 現在、東方諸教会に関する最新の研究蓄積とデータは、『東方キリスト教諸教会――研究案内と基礎データ』(明石書店、2017年)に譲られた。しかしながら、日本とエジプトをキリスト教でつないだ村山の功績は、かけがえのない足跡として、日本語キリスト教史に残るだろう。

【本体8,000円+税】
【教文館】978-4-7642-7379-5

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