【書評】 『視点を変えて見てみれば――19歳からのキリスト教』 塩谷直也

 各章を「Lesson1」「Lesson2」と表記し、「大学の教科書風」に、「愛」「自由」「信仰」「贖罪」など15のテーマを取り上げる。

 例えば愛について。「特定の人物間でモノや親切をやりとりする行為を、聖書は『愛』のカテゴリーに入れない」「お返しができない人への親切こそが愛」という。限定された空間(家庭・学校・職場・教会など)での人間関係がスムーズにいっていることが「愛」の証明とはならないということだろう(それが悪いとも言わないが)。愛に関する自己満足を許さないひと言だ。しかしこの気づきによって、「愛すること」、あるいは「人間関係」そのものの悩みに光が当たったと感じる方もいるのではないかと思う。

 青山学院大学で大学宗教部長を務め、「学生たちの群れの中に、常に19歳の自分がいると仮定し、『かつての自分』に語りかけて」きたという著者。分かりやすく、言葉少なであるにもかかわらず、心の深い部分に響いてくる文章から、「こそしゃくの人は、よく咀嚼し、きちんと腑に落ちたことを、率直に語ってくれている」という信頼感が沸いてくる。

 各テーマごとに載せてある、それぞれ「A」「B」「C」と付された2~3のイラストもよい。それらは互いに「似ているけれど、どこかが違う絵」で、見比べることで著者が伝えたいことをより理解できるようにしてくれる。

 「教科書」のように、一方的にまくし立てない。若者にこびるような内容でもない。読者との適度な「距離感」を保っている。この「距離感」が読み手の自己客観化を促すのかもしれない。読みながら自己省察している自分に気付く。

 何よりも、著者を通して語られるキリストは、どこまでも温かく、自分の弱さに打ちのめされている者に寄り添ってくれる。キリストに慰められ、寄り添われながら、自分を見つめ、「愛」や「自由」を発見あるいは再確認する。そんな1冊だ。

【本体1,200円+税】
【日本キリスト教団出版局】978-4818410206

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