【書評】 『神社本庁とは何か――「安倍政権の黒幕」と呼ばれて』 小川寛大

 神道の全容をつかむのは極めて難しい。職業人としての神職と牧師・神父の違い、特定の教義・経典を持たないという宗教体系の違いなど、理由はさまざまだが、神社本庁という存在の特異性も大きい。

 季刊『宗教問題』編集長の著者が、独自の取材に基づき「右」でも「左」でもない「神社本庁」論を展開。「安倍政権の黒幕」「伏魔殿」という先行イメージとは異なる実態を解明し、神道信仰者がわずか2.7%という「神社消滅」の危機に瀕しながら、戦前回帰願望を募らせ政治色を強める傾向に異を唱える。

 「戦前にはなかった巨大・富裕神社を世襲化させる基盤を確保した上で、戦前にそうしたごく一部の神社のみに存在した国家権力との関係や特権を〝取り戻そう〟としている。そういう外部からの人材が入り込めない閉じた特権階級サークルの中では、当然のように近親憎悪的な醜い派閥争いが発生することになる。……意識的にせよ無意識的にせよ、神社本庁が『戦前回帰』で目指す地点がこういうところにあるのだとしたら、それは神々に対しても氏子・崇敬者たちに対しても、あまりに申し訳ない姿だと言わざるをえない」

 「天皇のための宗教」としての国家神道が、戦後どのような変遷をたどって今に至るのかについて、一つの視点を得ることができる。日本会議、神道政治連盟、宮内庁との関係についても、より深く学ぶ必要性を痛感する。

【本体1,600円+税】
【ケイアンドケイプレス】978-4906674718

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