【書評】 『子どもとつくる平和の教室』 小薗崇明、渡辺哲郎、和田悠 編著

 長く戦後日本の教会は、信仰の継承と共に、平和の尊さを次世代へいかに伝えるかという課題と苦闘してきた。家庭や地域の教育力を危ぶむ声が聞かれ、教師の多忙化、ブラック部活、ブラック校則などの課題が山積する中、学校現場ではどんな取り組みが行われているのか。

 高校教員として、講義式ではない「考える日本史授業」を開発、実践してきた加藤公明氏に学び、戦争・平和の問題と日常の生活とを切り結びながら、「討論授業」で平和教育に取り組んだ千葉県歴史教育者協議会の若手・中堅教員らによる記録集。「沖縄戦」「安全保障」「自殺」など、多岐にわたるテーマの授業実践が11編紹介されている。詳細な授業の内容だけでなく、具体的な児童・生徒の反応、意見も収録されており、教室の空気感も読みとれる。

 「戦争の残酷さや悲惨さ、非人間性を告発し、平和の尊さを強く感情的に訴える、いわば『暴露・告発型』あるいは『情緒型』とも言える」従来の平和教育の課題について、「子どもが歴史や社会のなかに身を置いて考えるという状況的な思考を促さずに、現在の正義に子どもの視点を固着化させる、視野を封じ込めてしまう」と指摘。「生徒の自主性・主体性を担保し、可能なかぎりそれを伸び伸びと引き出すこと」「自分の暮らす地域との関わりや日常の生活との接点を見出し、そのつながりを大事にすること」などを重視し、徹底した討論によって自らの問題として捉え、学びを深めようと挑む。

 東京学芸大学教育学部に特任教授として赴任した加藤公明氏のゼミ出身者(いずれも90年代生まれ)による座談会も収録。道徳教科化でますます混迷の様相を呈する教育現場で、子どもたちの問題意識と教員を取り巻く現実に寄り添いつつ、「子どもが主役」の平和教育と地域社会との連携のあり方を問い直す気概にあふれた1冊。

【本体1,900円+税】
【はるか書房】978-4434256325

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