【書評】 『「筑豊」に出合い、イエスと出会う』 犬養光博

  序文で富阪キリスト教センター総主事の岡田仁氏は、本書を「1960年代半ばから半世紀にわたる、筑豊の一隅で起こった『キリストの出来事』証言集」と評する。著者は、閉山した炭鉱の町「筑豊」の地で四半世紀近く宣教に従事し、社会から「周辺」に追いやられ、苦難を強いられた人々と向き合い、共生の道を模索した稀有な経歴を持つ牧師。

 人々との出会いをとおして、カネミ油症事件、指紋押捺拒否闘争、在日韓国・朝鮮人の戦後補償などにも深く関わる中で、常に「教会とは何か」「イエスに従うとはどういうことか」「神と人に仕えるとは?」を問い続けてきた。本書は、その一つひとつの出会いによって、著者が学び、変えられていった過程を克明に記録する。

 80年代、本紙での差別発言に関するやり取りも登場。イエスを十字架にかけたのは「日本で言えば非人と云われるいやしい人々」「不浄を不浄とも感じなくなった階層の者たち」という菊池吉彌氏による寄稿について、「戦争責任に誠実に向き合った人であっても、自らをごまかすことのない人であっても、部落差別の問題に関してはまったく理解が及んでいないということがありました」と、差別問題の根深さを指摘する。

【本体1,600円+税】
【いのちのことば社】978-4264039655

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