【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『信仰の本質と動態』 パウル・ティリッヒ 著 谷口美智雄 訳

『信仰の本質と動態』(新教出版社、2000年)

 20世紀最大の神学者の一人パウル・ティリッヒ(1886-1965)の偉大な足跡は、カール・バルトに並ぶといっても過言でない。ティリッヒは、宗教社会主義、哲学、思想、藝術について幅広く論じた組織神学者である。

 本書『信仰の本質と動態』において、ティリッヒは「究極的なもの」との関わりから宗教や信仰を照らし出し、その本質を明らかにする。その筆致は、神学者・宗教哲学者としてのティリッヒの白眉である。

 「信仰は、われわれが究極的に関わるものに捕えられている状態であるから、すべての暫定的予備的な関わりは信仰に従属する。究極的な関わりは、ほかのすべての関わりに深さと方向と統一とを与え、人間を人格として基礎づける。真の人格的生活は、それ自身において全体として統一されており、この人格の全体性を産み出す力が信仰である。(中略)それは中心ある人格全体が究極的なものに向けられている状態である。信仰は無限の情熱の活動である」

 信仰が人間の日常的関心を超えた究極的な関心(死、生の意味、自己の存在意義など)との関係であることを明らかにし、ティリッヒは、この関係の中心にあって、人間に無制限の要求、脅威、約束をもたらす「象徴」が信仰の対象であるという。そして生ける「象徴」は人間の応答、行動、共同体を産み出す力を持ち、疑いが生じるときも、人間に勇気と冒険を促し、その疑いを克服へと導く。

 「生きた信仰は、それ自身についての懐疑、またその懐疑を自己自身のなかにうけとる勇気と冒険とを含む」「信仰は人間精神のもっとも内面的な、またもっとも包括的な活動である。……諸領域や諸機能は、すべて信仰活動において統一されている」「神のみが神を否定しうる……究極的な問いに対する無関心が、考えられうる唯一の無神論の現実の形である」

 鮮やかにティリッヒが「信仰」を描き出す本書は、ベストセラー『存在への勇気』と併せて、日本語で読めるキリスト教思想の古典的名著。

【本体1,000円+税】
【新教出版社】復刊版 978-4400340560

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