【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『内村鑑三と再臨運動 救い・終末論・ユダヤ人観』 黒川知文

 「基督の再臨は余輩の信仰ではない、聖書の信仰である、余輩は之を高唱して聖書の高唱するところを反響するに過ぎない、最も有力なる基督再臨論は聖書其物である…
 …今やキリスト再臨の信仰は実に聖霊の指導に基く世界の機運である。キリストの再臨は其の復活との間に密接なる関係を有する、若し復活を聖書の示すが儘に信ずることを得ば亦再臨をも信ぜざるを得ないのである…(内村鑑三)」

 本書は、日本プロテスタントの代表的人物「内村鑑三」の再臨運動(1917年5月~1919年6月)研究書である。著者・黒川知文は、ロシアのユダヤ人研究者であり牧師も務める。

 大正期のキリスト教運動を並べると、1907年(明治40年)内村の無教会運動、1914年(大正3年)全国協同伝道、1918年(大正7年)再臨運動、1925年(大正15年)神の国運動となる。大正期日本において、米国の保守的神学と欧州ドイツ新神学との相互干渉の中で、自らの立ち位置を求めた日本人プロテスタント第一世代・内村鑑三による終末論的な信仰復興運動、それが「再臨運動」だった。

 黒川によれば、それは説教中心の運動であり、第一次世界大戦の社会不安を前千年王国説において吸収した宗教運動である。加えて再臨運動「後」においても、集会に500人の出席者を得たという点で、キリスト教や聖書への新たな聴衆を獲得した運動だった。

 しかし、内村に対して植村正久、海老名弾正、小崎弘道らが批判論文を立て続けに発表し、論戦へと発展した。焦点は、有形的再臨か否か、また再臨の根拠が古代のユダヤ教にあるのか否か、聖書は迷信・矛盾・誤謬を含むのか否か。つまり、イエスの再臨の物理的身体性、黙示文学としての聖書解釈の是非、宗教的権威である聖書の科学的信頼性が問われた。

 黒川によれば、内村は以下のごとく批判に応えた。

 1. 再臨は有形再臨である
 2. その時期は特定できない
 3.「千年王国」の前に再臨がある
 4.「千年」は字義どおりの数ではなく、ある原理を示す
 5. 他の再臨信者のいう神癒は信じない
 6. 聖書は無謬の神のことばである

 大正期キリスト教の特徴は三つ挙げられる。第一は、個人主義と自由主義、教養主義。第二は、その教養ある自由な個人が核となり、各教派の独自展開を果たした点。具体的には、メソジストの禁酒運動、ホーリネス・日本伝道隊のリバイバル運動、日本基督教会の神学研究、組合教会の社会問題への関心などである。

 第三は、社会問題への積極的関与がより具体的に実現した点。賀川豊彦の生協運動、鈴木文治の友愛会、吉野作造の大正デモクラシー運動、救世軍、YMCA運動、石井十次の岡山孤児院、留岡幸助の家庭学校と実例は多い。

 大正期のキリスト教界を揺るがした内村の再臨運動とは何だったのか。100年前の「日本宣教」の一事例として、教会の棚に揃えておきたい。読書会にもお勧めの1冊。

【本体2,200円+税】
【新教出版社】978-4-400-31050-1

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