【書評】 『心の井戸を深く掘る 牧会者とカウンセラーの「魂の知」』 坂野慧吉、藤掛明

 月刊『舟の右側』誌上で13回にわたって連載された対談を単行本化。「はじめに」の中で藤掛氏が本書の「ユニークな読み方」を紹介している。第一は、坂野氏による牧会学の講義ノートとしての読み方である。50年近くにわたって牧会に携わっている坂野氏の「牧会」観、召命観、その悩みや自分の働き方の変化などは、共感しつつ学ぶべきところが多い。

 第二の読み方として「牧師の視点と信徒の視点、神学の視点とカウンセリングの視点を、どちらも有益な視点として統合する試みの書」としての読み方を挙げている。聖霊が働く「間」とカウンセリングにおける「間」の共通点や、時に相談者が示す抵抗の姿勢に関する考察、バイブルキャンプや受洗後に訪れる停滞とフェードアウト、「ゆるしの秘跡」のカウンセリング的側面、「癒しとは何か」、はたまた「みことばの乱用」や「教会のカルト化」「みことばの多義性」「牧師の健康」「信仰」「信頼すること」など、さまざまなテーマについて、縦横無尽のようだが「統合」を目指しながら繰り広げられ、思わず惹き込まれる。

 最後に、おおむね15歳の年齢の間隔がある両氏の対話を「世代継承の書」として読むという第三の読み方。第9章では、具体的にクリスチャンホームの信仰継承にも言及している。

 全体を通して、牧師と相談者(信徒など)の関係が信頼に基づくものとなるためには、「牧会」と「一般のカウンセリング」それぞれの概念を捉え直すこと、その違いと共通点を理解した上で「統合」していくことも無視できない課題であると気づかされる。「牧会」とは「個人相談」や「訪問」「通信」といったことだけではなく、礼拝、説教も含めた、もっと大きな神の働きである。

 これらの「読み方」も参考にしつつ、両氏の信仰と長年の働きから得た「魂の知」から学びたい。

【本体1,500円+税】
【地引網出版】978-4901634427

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