【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『科学と宗教 座談』 仁科芳雄、鈴木大拙、下村寅太郎、西谷啓治

『科学と宗教 座談』(弘文堂書房 、1948年)

 「科学というものも宗教というものも共に人間の存在と結びついて、その中から自覚的に開かれてくる立場ですから、客観的な事柄自体としての統一を求め、統一的な世界観を求めるということが、やはりどうしても起ってくる(中略)一人の人間の内でいっても宗教的なものも活動しているし、同時にものの考え方からいうと科学的なものの考え方も働いている。現実生活の上で一人の人間の中に宗教的なものと科学的なものとが同居している……」(西谷啓治、31頁)

 本書は4人の学者による「科学と宗教」を巡る座談会の収録だ。敗戦から3年後、1948年に物理学、仏教学、科学史、宗教哲学の各専門家が集まった。鈴木大拙(1870~1966年)は言わずもがな、英語で発信することで日本の「禅」文化を海外に伝えた仏教学者である。仁科芳雄(1890~1951年)は日本の素粒子物理学を世界水準に引き上げた「現代物理学の父」。京都学派・西田幾多郎の薫陶を受けた西谷啓治(1900~1990年)は、宗教哲学者、下村寅太郎(1902~1995年)は、科学史家である。

 80近い鈴木、還暦前の仁科、50代前の西谷と下村が世代を超えて、科学/宗教/哲学それぞれの立場から、その精神と方法論を述べる。また「マルクス主義」、「アインシュタインの宇宙論的宗教」、「原子爆弾の開発」について縦横無尽に語る。西洋における「キリスト教と科学」の問題系とは違う、「仏教」を踏まえた日本の状況を浮き彫りにする。

 それぞれの学問分野からの発言が「対立点」に光を当てて「科学と宗教」に潜む、古くて新しい「人間の良心」の問題を明らかにする。司会を兼ねながら各人のコメントを引き出す西谷啓治の知性が光る、全63頁の座談会。科学、宗教、哲学に関する基礎的姿勢を得るために最適な入門的小冊子。

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【弘文堂書房】

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