【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『友愛の政治経済学』 賀川豊彦

『友愛の政治経済学』(コープ出版、2009年)

 原著は、Toyohiko KAGAWA, “Brotherhood Economics”, (London,1937)。賀川豊彦が、米国ラウシェンブッシュ講座に招かれて講じた「Christian Brotherhood and Economics Reconstruction(キリスト教的友愛と経済再建)」を、加山久夫、石部公男が翻訳し、野尻武敏が監修した。

 第一次世界大戦や関東大震災から約20年、日中事変を迎え、第二次大戦「前夜」の賀川豊彦の経済思想が伺える。曰く「現代のキリスト教的プログラムのために何が必要なのか」(31頁)。 

 「キリスト教」国を自認する欧米で、人間生活は行き詰まり、さまざまな「貧困」が蔓延している。賀川によれば、この問題を解決できるのは、キリスト教的「経済」である。日本人を説得するためには、まず西洋諸国の「経済」がキリスト教によって改善せねばならない。ところが、現在「マルクスの共産主義」が人々が答えを与えようとしている。本来、キリスト者こそ世界「経済」問題に責任を持たなくてはならない。賀川は、自身の来歴から「主観経済学」の必然性を導き、諸外国における政治的・社会的な行き詰まりに「新たな道」を提示しようと本書を世に問うた。

 「不可避的に、唯物論的な共産主義を産み出すことになった資本主義の悲劇……唯物論的共産主義も政治的社会主義も達成し得なかった、そして信条主義的キリスト教の力も及びえない、社会の再建の、新しい道を、探さなければならない」

 21世紀現在、第二次世界大戦は終わり、東西冷戦の時代も過ぎた。賀川の時代とは違い、欧州はEUとして一つの巨大経済圏となり、ソヴィエト連邦はもはや存在しない。米中の経済戦争、東南アジア、南米諸国などの台頭も目覚ましい。とはいえ、時代に密着して書き下ろされた本書の主張は、前提条件が違えど、なお示唆に富んでいる。コンプライアンス、コーポレートガバナンスと「経済倫理」が説かれる昨今において、賀川豊彦の「有神論的経済学」には一読の価値がある。

【本体1,886円+税】
【コープ出版】978-4873322865

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