【雑誌紹介】 神の言葉が死活的に重要 『福音と世界』12月号

 特集「ネオリベラリズム再考」は、「いま私たちが生きている世界・社会を読み解こうとする時、新自由主義(ネオリベラリズム)はなお重要なターム」と見る企画。「電車をとめろ! 政治的実在論のために」(白石嘉治)、「女性の貧困とネオリベラリズム」(堅田香緒里)、「維新政治下の大阪再開発と釜ヶ崎」(生田武志)、「大学とネオリベラリズム」(大野英士)、「多文化共生は排外主義を抑制しうるか」(塩原良和)、「『性の多様性』時代とネオリベラリズム」(河口和也)。

 7年にわたって続いた「佐藤優のことばの履歴書」が最終回。1979年4月に同志社大学神学部に入った佐藤は「二回生のときにチェコのプロテスタント神学者ヨゼフ・ルクル・フロマートカ(一八八九~一九六九年)の著作に触れた。このときから筆者はフロマートカ神学の引力圏から離れることができなくなった。……神の言葉が死活的に重要と考える点で、カール・バルトとフロマートカは共通の地平に立っている。バルトにとっては、神の前でキリスト教徒が悔い改め続けることが強調される。これに対してフロマートカでは、神の前でキリスト教徒が悔い改めることは他者の前で自己批判することに直結する。他者にはキリスト教徒だけでなく、他の宗教を信じる人、さらに無神論者も含まれる。なぜなら、イエス・キリストの父なる神はキリスト教徒にとってのみの神ではなく、すべての人にとっての神だからだ」と。

 「特に共産主義者との関係について、フロマートカは、イエス・キリストに服従するキリスト教徒が、プロレタリアート(近代賃金労働者)や植民地の被抑圧民族など苦難の中にいる人々と連帯するという本来やるべきことをやらなかったが故に共産主義が生まれたと考えた。現実に存在する社会主義は、スターリンの影響を強く受けた全体主義的傾向を強く帯びていた。しかし、共産主義は本質において極端なヒューマニズムで、ニヒリズムの革命であるナチズムとは本質的に異なると考えた。従って、対話によって内側から共産主義者を変化させることは可能とフロマートカは考え、実行した。このアプローチから筆者は強い影響を受けた。高度に発達した資本主義国で、客観的に見れば帝国主義的政策を遂行する日本国家を対話によって内側から変化させるという『不可能の可能性』に挑むべきと思った。その具体的な結果が、戦争で取られた領土を取り返すという北方領土問題を、日本とロシアの戦略的提携を強化し、アジア太平洋地域に新秩序を構築することによって解決するというアプローチにつながった」と。

【本体588円+税】
【新教出版社】

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