【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『悪魔の人質』 マラカイ・マーチン 著/大熊 栄 訳

『悪魔の人質』(集英社、1980年)

 本書帯いわく「現代アメリカの悪魔祓いを実際に体験した著者が、緻密な取材をもとにオカルト・ブームの虚像に挑戦。厚いヴェールに包まれていたエクソシストたちの活動を、いま初めて明らかにする驚異のノンフィクション!エクソシスト 悪魔祓い師は実在する!」。

 「死海文書」に携わった教皇庁聖書研究所の教授マラカイ・マーチン神父(1921~1999年)が本書の主役である。1965年、マーチン神父は聖職を辞して、米国へ渡り作家となり、1976年に原著『Hostage to the Devil – Reissue: The Possession and Exorcism of Five Contemporary Americans』を発表。集英社が1980年にイギリス文学者・大熊栄(1944~2007年)の邦訳として本書『悪魔の人質』を出版。

 当時のアメリカにおける「悪魔憑き」への証言として価値がある。またマーチン神父にとってエクソシストの先輩にあたる、マイケル・ストロング神父の逸話は興味深い。マーチン神父によれば、1927年、旧日本軍が南京へと進攻する最中、同市南部のマイケル・ストロング神父は、自身が洗礼を授けた猟奇殺人犯トーマス・ウを廃屋で発見したと警察に連絡。内容は「いま悪魔祓い中です、どうか私に時間を下さい」というものだった。トーマスは、女性5人と男性2人を殺して食べた容疑で指名手配されていた。警察が到着すると、突如、湧きあがった炎によってトーマスごと廃屋が全焼。祓魔式は失敗した。その後、ストロング神父は死ぬ間際まで逃がした悪魔に悩まされた、という。

 2016年には同名タイトルでドキュメンタリー『悪魔の人質』(マーティ・ストーカー監督)が公開。関係者の証言を集めて、マーチン神父の生涯と死を描いた。

 「悪魔憑き」を題材にした同年公開の映画『悪魔祓い、聖なる儀式』(伊仏製作/フェデリカ・ディ・ジャコモ監督)、また映画『エクソシスト』の監督ウィリアム・フリードキン監督による、2017年『悪魔とアモルト神父』と併せて、比較すると興味深い。

【税込1900円】
【集英社】―

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