【書評】 『マイノリティの人権を護る――靖国訴訟・指紋押なつ拒否訴訟・BC級戦犯者訴訟を中心として』 今村嗣夫

 50年余の弁護士生活で携わった国家と宗教、少数者の人権、外国人と憲法に関わる裁判についての事例を挙げ、その背景を語り、さまざまな場所に招かれて語った内容を収録。詩とエッセイも交えることで、学生にも少数者の人権、平和をめぐる問題の意味を伝える。

 事例としての津地鎮祭意見訴訟、愛媛玉串料意見訴訟、自衛官「合祀」拒否訴訟、指紋押なつ拒否訴訟、韓国・朝鮮人BC級戦犯者の国家補償請求訴訟などは、多くのメディアでも報道され、いかに少数者の人権が不当な扱いを受けてきたかを明らかにしてきた。「民主主義は多数決でものごとを決めるが、多数決では決められないこと、多数決では決めてはいけないことがあると思う。宗教や良心、思想など一人ひとりの精神的自由の問題は多数決で決めてはいけないこと」と著者。これら一連の問題の背景にあるのは、日本の精神的風土(精神的社会環境)が明治憲法時代から未だに変革されていないからだとする。

 心の中の自由が宗教に向かうと信教の自由の問題になるとし、現行憲法は信教の自由は侵害してはならないと決めているが、その背景は明治時代以後、日本が戦争に負けるまで80年の間、国民の信教の自由が妨げられていたからだとする。歴史の潮流の中で著者が担当してきた裁判は、この国の平和を希求し、少数者の人権を確立するために闘ってきた人々の記録でもある。

【本体2,500円+税】
【明石書店】978-4750349022

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