【書評】 『今日のパン、明日の糧 暮らしにいのちを吹きこむ366のことば』 ヘンリ・ナウエン 著/嶋本操 監修/河田正雄 訳/酒井陽介 解説

 「人は『外に向かって伝え、分かち合うことのできる自分』と、『自分の内面を見つめることで意識される、秘めておきたい自分』の両方を持っています。多くの人は、分かち合うことのできる自分を伝えるものですが、ナウエンは、不完全で、不自由な自身のこころの内側の出来事も書きつづりました。ここにナウエンのもたらした新しさがあります。それは、潔く、強く、正しくなければいけないという外側の声に対して、ありのままの自分から目を背けずに、受け止め、捧げていきたいというナウエンの矜持だったように思います。その秘められた部分を分かち合うことで彼は、洋の東西を問わず、また宗教を問わず、多くの人にとり、霊的旅路の同伴者になりました」

 ナウエンの言葉を手掛かりに、神の愛を再確認、再発見できる本書。どんな言葉が人の励まし・力・いのちとなるのか。このことを考える時、言葉には2種類あるのではないかと感じる。一つは、元気や勇気を奮い立たせる力強い言葉である。このような言葉を励みに歩めるならば、それに越したことはない。しかし、「力強い」言葉を聞くことによって、むしろ生きる気力を失ってしまう人々がいる。誰かが語る弱さの告白を聞くところで、かえって勇気を得て再び歩み出せる人々もいる。

 ナウエンの言葉は、後者にこそ「いのちを吹きこむ」言葉として響き続けているのではないかと思えてならない。どちらのタイプの人がよいか悪いかということではない。ただ、自分の弱さやブレを味わい知り、自己肯定感の持てない状態を経験したナウエンだからこそ語れる神の愛が、今日を生きるために必要としている方々に届いてほしい。そう願わされる1冊である。

【本体2,400円+税】
【日本キリスト教団出版局】9784818410442

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