【書評】 『女のキリスト教史――「もう一つのフェミニズム」の系譜』 竹下節子

 「……ミートゥー運動に象徴される、現代の『男女同権』を目指すフェミニズムとは異なり、ヨーロッパにはカトリックを起源とする『もう一つのフェミニズム』の水脈があった。聖母マリア、マグダラのマリアに始まり、中世修道院の女性たち、異端として処刑されたジャンヌ・ダルク、国と宗教を超え崇敬される現代の聖女マザー・テレサまで、キリスト教における女性への差別と崇敬の歴史を明らかにする」

 キリスト教が持つ女性的な側面を再確認できる本書だが、本書の特色は「フレンチ・フェミニズム」の紹介および、アメリカ、そして日本にも広がる「ピューリタン的アングロサクソン型フェミニズム」との比較を扱っていることだろう。

 フェミニズム運動は、時に善と悪、男と女などの二元論や対立という「行き過ぎ」が起こる。この「弱点」を持つのが、日本でも漠然と広まっている「ピューリタン的アングロサクソン型フェミニズム」であり、それゆえにフェミニズムに苦手意識を持つ人は意外と多いのではないだろうか。「神はフェミニストではない」との筆者の言葉には、ハっとさせられる。

 一方、聖母崇敬や大人の恋愛マナー「ギャラントリー」文化が盛んなフランスにおける「フレンチ・フェミニズム」にも、やはり弱点はあるようだ。今あるフェミニズム(あるいはフェミニズム神学とも言えるかもしれない)は、あくまで不完全なものである。それでも、キリスト教を含めた社会に蔓延する性差別、弱者差別を克服する何かが必要だ。では、何が不完全なフェミニズムの欠けを補い得るのだろうか。そのヒントは、父権制と女性嫌悪の教義の中で信仰のモチベーションを失わなかった修道院の女性たちや、ジャンヌ・ダルクらの姿にあるのかもしれない。

【本体860円+税】
【筑摩書房】9784480072733

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