【書評】 『チャイルド・プア――社会を蝕む子どもの貧困』 新井直之

 NHK「特報首都圏」で2012年に放送され反響を呼んだ「チャイルド・プア」。同番組を担当した報道番組ディレクターの新井直之氏が、その取材経緯と貧困にあえぐ子どもたちの実態を書き下ろした。

 「学校給食だけが唯一の食事だという小学生」「一家で夜逃げをせざるをえなくなり、2年間の車上生活で学業が大幅に遅れてしまった中学生」「家庭崩壊から10代でホームレス生活を送った男性」……。自らの意思にかかわらず、さまざまな家庭環境により貧困状態を強いられる子どもたち。就学援助を受ける児童の数は、実に156万人(小中学生の6人に1人)に上るという。

 なぜ、そうした実態が広く知られてこなかったのか。「子どもの貧困を隠しているのは他ならぬ、大人なのではないか」と著者は言う。「私も含めて報道機関に携わる人間は、どれだけ真摯にこの問題を世の中に伝えようとしてきただろうか。取材先のプライバシーや個人情報の壁に阻まれて、取材が極めて難しい中、それを言い訳に妥協することはなかっただろうか」

 本人の心のケアや居場所の提供、家族への経済的な支援など、個別の事情に応じた包括的な支援が求められている。本書で紹介されているのは、貧困世帯の子どもたち向けに無料学習支援などを行うNPO法人「さいたまユースサポートネット」の取り組み。

 家庭にも学校にも自治体にもできない支援。まさに教会の出番ではないか。

【本体1,500円+税】
【ティー・オーエンタテインメント】978-4864722391

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