【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『変わっていくこの国で 戦争期を生きたキリスト者たち』 石浜みかる

『変わっていくこの国で 戦争期を生きたキリスト者たち』(日本キリスト教団出版局、2007年)

 戦時下においてキリスト者はどのように生きるべきか。実際に、どのように生きたのか。この問いに答える1冊が、作家・石浜みかるによる本書だ。目次には、野木てい、脇本寿、光井文武、朱基徹、セディ・リー・ワイドナー、今泉源吉、織田楢次、村上俊、林栄華、イシガ・オサム、石濱義則、そして、満州基督教開拓村が並ぶ。

 「若き日の賀川は、今から見ると、とうてい受け入れられないコメントなどを書いています。しかし国策など見向きもしないで、苦境にあえぐ人々の中に、個人として飛び込んでいった側面もありました。この満州基督教開拓村の事業は、賀川も、日本基督教連盟、日本基督教団も『良かれ』と思ったのでしょう」

 満州基督教開拓村は、賀川豊彦の募集に応じた220人が国策として送り出され、死者・不明者96人に上ることが淡々と記される。列強に追いつかんと舵を切った帝国主義・日本は「王道楽土」「五族協和」を唱えて、関東軍による傀儡国家・満州国を建設する。

 関東軍と政府は「二十カ年百万戸送出計画」に基づき、満州に模範的「日本人」として「キリスト者」村の設置を決める。政府と軍の要請に応えた教会は「満州基督教連合会」を結成。その悲惨な結末は、本書が明らかにするところだ。

 1941年4月、開拓団本隊として到着した大阪生まれの幼児は、劣悪な環境ゆえに、3日後、わずか1歳半の生涯を終えることになった。開拓団本体から徴兵しないという約束は反故にされ、男手は消えた。敗戦と共に避難したハルビンでは、老人と幼児は冬を越せず、女性は性的虐待被害にあった。

 本書は、このような戦時大日本帝国下におけるキリスト者の動きを追う。日本人キリスト者に限らず、韓国人、アメリカ人、満州開拓団など様々な人物・団体を樺太から台湾まで広範囲に取り上げている点に著者の意欲がうかがえる。

 国家と宗教、政治と教会、個人と全体、その相克と調和の難しさは今なおアクチュアルだ。キリスト教史学会編『戦時下のキリスト教――宗教団体法をめぐって』(教文館、2015年)と併せて読みたい1冊。

【本体1,700円+税】
【日本キリスト教団出版局】978-4818406476

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