【書評】 『沖縄田舎牧師の徒然草』 當銘由正

 本書は、コラム調の短い文章により、選ばれた52のテーマについて綴られている。彩り豊かでさまざまな角度から語られているため、気軽に手にしながらも、気が付くと一気に最後まで読んでしまう。そのような仕掛けになっている。それを裏付けている、著者の古今東西並びに和洋の叡智に学ぼうとする幅広い知的好奇心とその勉強量には驚かされる。

 本書では、主として、著者の80年に及ぶ経験豊かな人生に題材を得ながら、その節目節目の思い出や出来事について印象を語っていく。実体験に裏付けられているので、この種の本にありがちな説教臭さや押しつけがましさはなく、むしろ著者の個人的な視点が率直に語られている点で読者の支持を得やすくなっている。

 とはいえ意見は奇をてらうことなく誠に正論であり、ソフトなタッチでありながら思わず背筋が真っすぐになるような読後感である。古き良き沖縄の良心。多くの人が失ってしまった優しくも、強く、正しい心。そんな郷愁につい引き込まれて、本書を読破してしまう人々も多いのではなかろうか。

 もちろん、著者の個人的視点には聖書やそれにまつわる蘊蓄が種々ちりばめられている。それゆえ、「良き沖縄あるいは日本人として生きることは良きクリスチャンとして生きることである」という本書のテーマに読者は自然と説得させられてしまう。著者の偽りのない、真摯で誠実、それでいて軽やかなキリストにある円熟した人格のなせる業であろう。

 キリスト教をよく知らない、でも「正しく生きたい、幸せになりたい」、そんな願いを持つ、多くの普通の人々にとっての格好のキリスト教案内書であり、教会へと架けられた良質な「橋」だと言えよう。一人でも多くの人が、本書によってキリスト教に関心を持ち、教会へと導かれるように願ってやまない。

評者:行澤一人(単立日之出キリスト教会牧師)

【本体1,500円+税】
【球陽出版】978-4-9906737-8-9

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