【書評】 『中田重治とその時代 今日への継承・教訓・警告』 中村 敏

 本書は中田重治の生涯に焦点を置きつつ、ホーリネス教会の戦前戦後史、さらにはその背景となるイギリスやアメリカの信仰復興運動、そこから生じた四重の福音やディスペンセーション神学、そしてついにはその副産物としてのシオニズム運動や日猶同祖論というように、同心円状に議論を広げていく。

 そこから著者が読者に見せてくれるのは、今日のトランプ政権とイスラエルとの外交である。ディスペンセーション神学によれば、キリスト再臨の際には地上のイスラエルが再興するという。それゆえ1948年に建国される以前は建国支援を、それ以降は国家としてのイスラエルを支援することは、キリストの再臨を早めると信じられるようになった。トランプ大統領の支持層である福音派にはこの信仰に立つ人々が多くおり、トランプがイスラエルのアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転させたのも、いわば福音派への「神学的配慮」だったというのである。

 中田重治も生前やはりディスペンセーション神学に立ち、イスラエルの再建を熱烈に支持する日猶同祖論者であった。そして彼は愛国心に燃える日本人として教会員を指導した。その姿はアメリカの福音派の人々が愛国心に燃えていることにも通じる。

 本書ではもちろん、中田重治指導のホーリネス教会がどのような経緯で今日のホーリネス系諸教派に至ったのかも、戦時中の弾圧の歴史も含めて詳細に書かれている。特に政府による弾圧と日本基督教団からの無視とは、今読んでも突き刺さる事実である。

 ホーリネス系諸教派の信徒・教職の方々にも、そしてホーリネスに限らず、政治や外交に関心がある方々にも読んでほしい1冊である。

【本体2,800円+税】
【いのちのことば社】978-4264040682

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