【書評】 『地球社会共生のためのシャローム』 藤原淳賀、真鍋一史、高橋良輔 編

 本書は青山学院大学地球社会共生学部の専任教員及び東方敬信名誉教授による平和(シャローム)の探求が収斂された論文集である。これは青山学院の教育理念を具現化した研究成果であると言える。平和構築に関心のある読者には知識の宝庫となる内容である。

 本書の通奏低音は平和(シャローム)の概念である。平和とは何か、その理念と実証、そして平和構築に対する実践について、それぞれの切り口から学術的に探究される論文9篇とコラム1篇の構成となっている。教会が地球規模で平和構築について考察するのに非常に有益な1冊である。

 第一部では理論的考察がなされる。第一章はキリスト教的平和概念の定義づけ及び概念の説明について、神学的・歴史的観点から概念構築がなされる。第二章は国際情勢の変遷と平和概念の変化について考察され、グローバル化された現況の分析が施される。第三章はインターネットが社会に及ぼす影響と平和概念に対する変化について、インターネットの急速な普及がもたらす概念的要素について言及される。

 続く第二部の実証部分において、第四章は宗教多元主義の方向と平和の探求として、欧米における意識の変遷と、そのことがもたらす平和構築への影響について考察される。第五章からはさらに具体的な事例へと進み、タイ仏教のタイでの役割とその変遷について探求される。第六章はメディア教育と共生について、大学がメディア教育を通して行う平和構築という目的に対しどのような取り組みが可能なのかの探求がなされる。

 第三部では上記の内容を踏まえてさらに踏み込んだ探索となる。第七章は人間の安全保障の視座からの地球共生として、特に文化の側面に焦点が合わされ、その限界性の中での共生への可能性を模索する。第八章ではタイ北部の山地民の事例が取り上げられ、社会において周縁化されている人々への具体的な支援と協働の可能性について分析がなされる。そして第九章では教育と共生として、日本にいる外国にルーツをもつ子どもたちへの教育実践が取り上げられ、平和実現のために教育が果たすべき役割について提言される。

 内容が深淵で豊富なだけに完全に読解することは至難の業かもしれない。だが、特にキリスト者にとって重要なテーマであるが故に、多くの方に読まれ議論と実践の一助となることを願ってやまない。(評者・飯田仰=青山学院大学非常勤講師、日本同盟基督教団国外宣教総主事)

【本体3,000円+税】
【ミネルヴァ書房】978-4623089840

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