【書評】 『靖国神社とは何だったのか』 堀 雅昭

 靖国神社の初代宮司、青山清の子孫である著者が、長い年月をかけて調査した結果をまとめた本書。意外にもキリスト教とのつながりが登場する。

 靖国神社のルーツは、幕末の長州藩において生まれた「招魂社」。幕府のあり方を激しく批判した吉田松陰をはじめ、禁門の変の戦死者などの魂を神として招き、神社で祀る。招魂という儀礼そのものは遠く儒教にまで遡るとはいうものの、戦死者を身分の別なく神として祀るあり方は新しいものであった。

 著者はそこに、南北戦争で生まれたチャプレン(従軍司祭・牧師)の、戦死者埋葬の葬礼からの影響を見る。著者によれば、「招魂社」の神道である吉田神道においては、「元神」「託神」「鬼神」の三神があり、それはキリスト教の三位一体を想わせるという。現に吉田家からも江戸時代初期にはキリシタンが出ており(神龍院梵舜=洗礼名ジョアン)、青山清の孫娘(著者の曾祖母)もクリスチャンとなったという。

 明治時代、東京に創立された「招魂社」はやがて靖国神社と名を改めるが、基本的には倒幕運動の戦死者(官軍)を祀る神社として、通常の神社とは異なる働きをするようになる。また、創立当初はフランスの曲芸団が呼ばれたり、広大な庭園が整備され、イタリア人の設計によるお城のような博物館(遊就館)が建てられたりと、今日でいう遊園地やテーマパーク的な役割も果たしていた。明治の靖国神社と昭和のそれとは、様子がかなり違っていたことも知ることができる。

【本体1,200円+税】
【合同会社宗教問題】978-4910357003

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