【書評】 『トラウマにふれる 心的外傷の身体論的転回』 宮地尚子

 教会にはさまざまな「傷」を持った人が来る。教会員であれ牧師であれ、傷ついた人を支援しようと願い、祈る。一方で傷ついた人の言動に戸惑い、場合によっては「本当に傷ついているのか」といら立ちさえ覚えることがある。しかしそれは「傷ついた人らしさ」を想定する我々の側の先入見によるものであることを、本書は教えてくれる。

 教会員や牧師の家庭においてDV(ドメスティック・バイオレンス)や性的虐待が明らかとなった時、あるいは被害者であれ加害を止められないで苦しむ人であれ、そういう当事者が教会に相談に来たら、教会はどのように対応したらよいのか。教会は精神科病棟ではないし、牧師や教会員も多くは専門的知見を持たない。中途半端な慰めよりも、まずは然るべき専門機関につなぐことが大切であろう。傷ついた人を関係諸機関へとつなぐ、ハブとしての機能が地域から求められている。

 とはいえ、暴力や虐待によるトラウマ、リストカットなどの自傷行為やアルコール依存などについて何の知識もなければ、当事者の苦しみの傷に塩を塗りかねない。本書では著者自身の豊富な臨床例および先行研究の紹介が、初心者にも分かりやすい表現で綴られている。また著者は精神科医であるだけでなく医療人類学者、フェミニストでもあり、トラウマとジェンダーにまつわる繊細な語りがそこにある。多くの教会関係者に手にとってほしい1冊。

【本体3,400円+税】
【金剛出版】978-4772417709

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