【雑誌紹介】 「個人として尊重される」 『福音と世界』12月号

 特集「パンデミックと生存格差」。斉藤小百合(恵泉女学園大学教授)が「パンデミックと憲法」で「国家の存在目的はまず人びとの生存を守ることであり、とりわけ日本国憲法は『人びとのいのちを大切にせよ』と命じていると述べた。戦後の日本社会は、日本国憲法に希望を託す多くの市民の力によって、相応に憲法的な理念を実現してきた」と言う。

 さらに「日本国憲法のもっとも重要な理念は、一三条に規定された『個人主義』(すべての人が『個人として尊重される』)である。……『戦争法』は制定されてしまったけれども、さらにこれを憲法規範化しようとする『憲法改正』の策動は、かつてない市民の取り組みによってこれまでなんとか阻止されてきた。……しかし、反対に言えばこのように『個人』が顕在化したのは、日本国憲法が苦境に追い込まれてきたからに他ならない。日本では一九九〇年代から新自由主義改革が推し進められるとともに、憲法的価値が掘り崩されてきた。新自由主義改革にまい進してきた結果として、『国家』はどんどん『後退』してしまい、多くのことが『民営化』(=市場化)された。そのために「生存権」がここまでやせ細ってきてしまった。そうした状況が生み出したのが、今日の『生存格差』である。憲法はこれまでと変わらず『人びとのいのちを大切にせよ』と命じているのに、『いのちよりカネ』が横行するようになってしまったのである」と。

 「このたびの新型コロナウイルスの感染症の広がりで、新自由主義改革による医療体制の破壊があらわになった。コロナウイルスに感染して重症化した人が急増したから『医療崩壊』するのではない。それはすでに新自由主義改革によって、医療体制が破壊されてきたからと言うべきだろう。……憲法に照らして『改革』しなければならないのは、新自由主義政策を支える土壌となっている成長至上主義・成果主義や軍事主義、そして、それらときわめて相性のよい男性中心主義、特に“toxic masculinity”(有毒な・毒々しい男性中心主義)である」と。

【本体588円+税】
【新教出版社】

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