【雑誌紹介】 「ともに歌う」ことが難しい 『礼拝と音楽』188号

 特集「ブルックナー」。  桜美林大学教授の植木紀夫が「ブルックナーの教会音楽を聴く」を寄稿している。「今、わたしたちは音楽を演奏すること、殊に『ともに歌う』ということが難しい状況の中を生きています。パンデミックによって、多くの教会聖歌隊や合唱団が、集って一つの作品を仕上げていくことを断念しました。合唱コンクールが中止となり、部活動で合唱に取り組んできた生徒たち、特に最終学年の生徒たちは、非常に受け入れがたい現実に直面しました。そして、大学で音楽を学ぶ学生たち、わたしを含め指導する教員たちも、大きなチャレンジを受けました」と。

 そして「合唱音楽を学ぶこと、自分の声と他者の声のハーモニーを体験することは、声楽はもちろん、楽器の演奏や指揮、作曲のための基礎的なトレーニングとして欠かせません。しかし、二〇二〇年度は対面授業ができず、オンラインで合唱や指揮法の授業を行いました。物理的に同じ空間に複数の人間が集って、声で空気を振動させ、その振動を捉えるということを体感しないやり方で、合唱や指揮法を指導する。それは果たして合唱音楽を指導するということになるのか。『オンライン合唱など合唱ではない』と批判をする向きもあるでしょう。実際、対面での合唱と、オンラインで歌声を集めてコンピューター上で合成した『オンライン合唱』は別物です。しかし、それらが別物であるとわかった上で、『オンライン合唱』を学ぶ意義はあると思います。今はまさに、音楽を学ぶということがどういうことなのか、認識をアップデートする時なのでしょう」。

 筆者はさらに「同時にこの『オンライン合唱』を通して考えさせられたもう一つのことは、その『作品』の音楽的達成度よりも別の次元のこと、すなわち歌と音楽で互いに重なり、繋がり続けようとする弛みない取り組みの現れだということです。その形態は従来のものと異なっています。しかしそれは、教会音楽における『共同体による賛美』の本質的な要素であったはずだと思わされるのです」と言う。

 他に「ブルックナーの生涯」(根岸一美=大阪大学名誉教授・音楽学)、「ブルックナーの創作と十九世紀音楽」(西原稔=桐朋学園大学名誉教授)、「セシリア運動の諸相――教会音楽のあり方を探求した人々」(米沢陽子=オルガニスト)など。

【本体1364円+税】
【日本キリスト教団出版局】

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