【書評】 『新宗教を問う: 近代日本人と救いの信仰』 島薗 進

 新宗教が日本で強い影響力をもっていることはよく知られている。政党と結びつき、選挙の際には大きな力を発揮する。教団本部その他の施設が置かれ、新宗教の城下町のようになっている地域さえある。公称ではあるが、日本に100万人以上の信徒を有する新宗教は7団体あり、伝統宗教の信徒数をはるかに上回る団体が数多く存在する。

 かくも大きな勢力をもつ新宗教が、いかに誕生し、何によって人々の心を引き寄せたのか、またどのように発展し、現在どんな活動を行っているのか、新宗教を学ぶ意義は小さくない。

 著者は本書を、宗教学者としての集大成と位置づける。「長い時間をかけて取り組んできた新宗教研究の全体を、手頃なサイズでまとめたいと思った。集大成といっても研究書ではなく、研究水準は踏まえつつも読みやすい概説書の形にしようと考えた」(「あとがき」)

 新宗教はその活動開始時期から大きく四つに分けることができるという。第一期は19世紀はじめから明治時代中期で、天理教、黒住教、金光教など。第二期は明治後期から大正期で、大本、国柱会などがあり、宮沢賢治も国柱会に所属していた。第三期は1920~60年代で、創価学会、霊友会、(大本から分かれた)世界救世教、生長の家、立正佼成会、PL教団などが勢力を伸ばす。この時期は新宗教の最盛期で、「神々のラッシュアワー」とも称される。第四期は1970年以降であり、阿含宗、真光、統一教会、オウム真理教、幸福の科学などが含まれ、新宗教よりも新しいため「新新宗教」とも呼ばれる。またこの時期に伸長が著しかったのは真如苑とエホバの証人である。

 これらの各新宗教について、その起こりから現在までの歴史、教祖とその来歴、基本教理、布教方法、組織の特徴、国家との関係などが資料を交えて詳説されている。どの団体に対しても客観的な記述に徹し、たとえ奇妙な教えや活動であったとしても、それら新宗教に向かう日本人の心性に焦点を当てているのが本書の特徴でもある。

 後半では、新宗教が発生した背景を探る。江戸時代から明治期の民俗宗教が基盤となっていることを明らかにしつつ、当時の日本の社会情勢を検討し、人々の心をつかんだものが何であったのかを見極めようとする。また、救いの宗教とは何か、救いの観念がなぜ重要かを問い、「宗教とは何か」という宗教論や救済観に発展して論考する。

 終章にかけては、1970年代以降の日本の宗教やスピリチュアリティの動向を捉えて、新宗教の先にあるものを展望する。近代に大発展した新宗教はなぜ現代において衰退しつつあるのか、救いの信仰に向けられた人々の心はどこへ向きを変えていくのかを考察し、新宗教が担ってきた精神文化を引き継ぐものとして、新たなスピリチュアリティの諸形態に注目している。

 日本の近代化と共にあった新宗教。「救い」に代わるものを求めて、人々の心は今後どこへ向かうのか。本書は現代の視点から新宗教全体を捉え返し、現代人のスピリチュアリティ(霊性)を再考する機会を与えてくれる。

【本体940円+税】
【筑摩書房】978-4480073518

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