【雑誌紹介】 統治能力のあり方を考える 『福音と世界』3月号

 特集「死刑なき世界へ」。編集者が冒頭に「本特集ははっきりと『死刑なき世界』を目指すものである」と特集を組んだ意図を述べている。

 「死刑制度をめぐる議論の歴史は長い。法学、哲学、宗教、倫理……さまざまな見地から死刑が語られてきた。そこではたとえば人権をめぐって、被害者支援をめぐって、犯罪抑止効果や冤罪をめぐって、論争が交わされている」

 「これらの議論が明らかにしているのは、死刑について考えることは単に刑法の一部の是非を考えることではなく、国家をはじめとした統治権力のあり方を考えることであり、ひいてはこの世界における共生の方法、人間のあり方そのものを考えることだ、という事実である」

 「周知の通り、日本には今も死刑制度が存置されており、実際に執行も続けられている(直近だけでも二〇一七年に四人、二〇一八年に一五人、二〇一九年に三人)。さらに、存置の根拠として「死刑制度を容認する人が八〇パーセントを占める」との世論調査がしばしば引き合いに出される」

 「しかしこの現況をもって、死刑をめぐる議論が尽くされたと結論することは決してできないだろう。死刑が人間のあり方そのものに関わる根源的な問題であれば、なおさらだ」

 「まず法的な観点から、日本の死刑制度の実態とその問題点を把握しよう。その上で、さらに多様な視座から死刑を考える。キリスト教や国家の『主権権力』を支える原理としての死刑と、そうした構造への抵抗可能性とは。レイシズムの問題と分かちがたく結びついた米国の死刑存廃議論から見えてくる、死刑を『正義』たらしめるものとは。日本という国家における死刑と戦争、天皇制のつながりとは。『生』の絶対的肯定という側面から死刑廃止論とフェミニズムの関係性をどう考えるべきか。そして、修復的正義という実践哲学が与えてくれるヒントとは」

 「これらの論点からも、死刑を考えることがすべての人にとって喫緊の課題であることが明らかになる。死刑なき世界へ、さらなる議論を」

 注目は「刑事司法制度としての死刑を考える」(田鎖麻衣子=弁護士、NPO法人CrimeInfo代表)、「主権権力から別の赦しへ――死刑廃絶のために」(守中高明=早稲田大学法学学術院教授、浄土宗・専念寺住職)、「死刑・戦争・天皇制」(太田昌国)など。

【本体588円+税】
【新教出版社】

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