【書評】 『平和をつくり出す神の宣教――現場から問われる神学』 西岡義行 編

 本書は、東京ミッション研究所(以下、研究所)創立30周年記念論文集と銘うたれ、創立に寄与されたロバート・リー博士のビジョンとその思索、そして彼の薫陶を受け使命を受け継ぐ7人の論考である。リー博士の貢献を踏まえつつ、彼が託した「日本における宣教の10の課題」(66~72頁)に研究所のこれまでの取り組みをたどりつつ、30周年記念論文として上梓されている。

 リー博士の論点は、日本の近代宣教のパラダイムに光を当てて、欧米のそれではなく、日本の文化的、宗教的な歴史を踏まえた「新しいパラダイム」を求めるものであり、そこから「日本文明における『神の宣教』(missio dei)の文化脈化を考察する」(63頁)10項目の宣教学的課題が提示されている。

 第2章以降の論考は、この10の課題への応答として取り組まれたものと位置づけられている。「あとがき」には、リー博士の日本における10の宣教的な課題に対してこれまで研究所が取り組んできた主題研究が紹介されて、その果敢な取り組みの系譜がよく理解できるものとなっている。

 今回の記念論文の論考を10の課題の視点から見てみると、その主題それぞれが横断的な仕方で取り組まれており、さらにはリー博士の信仰的な遺産であるメノナイト神学の影響を受けつつ、今日の先駆的な米国の神学者らの平和論、贖罪論や教会論を取り上げつつ論述しており、ポスト・モダンにある今日的な社会に意味のある応答として提示されていることがうかがえる。

 「平和」をもたらす「神の宣教」を、聖書神学から、修復的贖罪論から、さらにはイエス・キリストの弟子というアイデンティティ構築と聖化の課題から、現場を見据えた包括的福音による弟子共同体の育成という観点から論じられて、「平和をつくり出す神の宣教:現場から問われる神学」という書名となっているのだろう。

 多角的な課題を考えさせられることの多い論文集である。ただ、執筆者の論考の先行研究や対話相手が欧米の学者に負うところがあり、リー博士の目指した「東洋史」を経た日本という文脈における課題研究が、今後さらに待たれるところである。

(評者・倉沢正則=東京基督教大学国際宣教センター長)

【1,980円(本体1,800円+税)】
【東京ミッション研究所】9784909871282

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