【書評】 『遠ざかる日々』 難波田節子

 小説家・難波田節子氏の9冊目の作品集。収録された6編の作品のうち、「懐かしい街」は、作者が随筆のつもりで書き始めたものだという。

 弟の死をきっかけに、子ども時代を過ごした東京・巣鴨を訪れた「私」。戦後、疎開先から帰ったときの瓦礫と化した街とは変わってしまったが、思い出す弟の表情は少年のままだ。巣鴨教会の「からたちの花」記念碑の前で、作曲家の山田耕筰と弟の姿を重ねる。弟とは長い人生を寄り添ってきたつもりだったのに、肝心なことは何も話していなかった。葬儀に行くこともできず、今となっては、弟を思い出すよすがとなるものもない――。

 文芸評論家の勝又浩氏は「解説」で、こうした「小説と随筆の境界が消えてしまったような作品」こそが「日本の究極の小説」だと言う。作者が自らの人生と向き合うことで生まれた作品だ。

【1,650円(本体1,500円+税)】
【鳥影社】978-4862658876

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