【雑誌紹介】 健康被害起きれば自己責任 『福音と世界』8月号

 特集「生きるためのフェミニズム2――何に抗するか」。「近代スポーツと科学、性別」(井谷聡子)が言う。

 「人々の感情を逆撫でするオリンピック関係者の発言はまだまだある。女性蔑視発言で会長の座を退いた森喜朗に代わって組織委員会を束ねる橋本聖子は、オリンピック選手に優先的にワクチン接種を行うことについて『アスリート・ファースト』と表現した。この言葉は、もともとスポーツ組織の利害関係ではなく、選手の健康と権利を優先させるべきであることを表現した言葉だ。だが、高齢者や基礎疾患のある人はおろか、医療従事者ですら二回のワクチン接種が完了していない中での『アスリート・ファースト』発言は、人命よりもアスリートの夢を優先することを表明するもので、批判は免れない。この発言はまた、選手の健康を案じる人々の気持ちを利害関係のために利用するもので、もともとの言葉の意味を一八〇度捻じ曲げている」

 「言葉の歪みはまだある。アスリート・ファーストと言いながら、出場する選手たちは、出場した結果としてSARS-CoV-2に感染したり、熱中症などによる病気や死亡が起こったりしても、IOCや大会組織委員会の責任を問わないことを誓約するよう求められた。選手村の建物の換気システムの不備や複数の選手が同じ部屋で過ごすことの危険性を指摘する専門家もいるが、そうした問題のある施設の中に選手を閉じ込めることを『バブル』と表現し、そこで万が一健康被害が起こった時には自己責任だという。これのどこがアスリート・ファーストなのだろう。東京オリパラ担当大臣や女性活躍担当大臣まで務めた橋本が空虚で矛盾した『アスリート・ファースト』を謳ってオリンピック関係者の利権を守ろうとする姿は、平和と友好、平等を唱えつつ、選手の健康を後回しにし、暴力的な態度で開催国の世論を無視するIOCの姿そのものである」

 「オリンピックをめぐり、選手の人権と健康が置き去りにされるのは新しい事態ではない。特に女性アスリートに関しては、性差別的な待遇や規定、性暴力の隠蔽など、スポーツの統括組織自体が女性差別に長く深く関与してきた。時代とともに形を変えながらも継続されてきた性別確認検査は、女性だけを監視の対象とする非常に性差別的な規定だ。だが、日本でも報道された南アフリカのモガディ・キャスター・セメンヤに対し、同じ競技に出場した女性たちから差別的な発言がなされ、女性アスリートたちが「女子競技の公平性を守る」ことを理由に性別確認検査(今日の高アンドロゲン症規定)を支持する場合もある」

 寄稿「祈りという非力な抵抗について」(渡邊さゆり)。

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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