【書評】 ケズィック・コンベンション説教集『わたしたちの希望 パンデミックの時代に』 大井満 責任編集

 昨年、第60回という記念すべき節目であるにもかかわらずオンラインで開催された日本ケズィック・コンベンション。その全説教と、各地区コンベンションから1編ずつの説教、ジョナサン・ラム氏によるルツ記の説教3編を収めた説教集が出版された。ケズィック・コンベンションは、イギリスの湖水地方にあるケズィックという町で1875年から毎年開催されてきた集まり。教派を超えて、深い神との交わりを求めるホーリネス運動を展開している。

 日本では1962年の「日本キリスト者修養会」を契機に始まり、1991年からケズィック説教集が刊行されてきた。本書の巻末には過去30年分の説教集の索引が掲載されており、いつ誰がどの聖書箇所でどのような説教をしたかが調べられる。所収された説教のいずれからも聖霊に満たされる喜びと熱さが伝わってくるが、一部を抜粋しよう。

 「クリスチャンは自らが罪人であるということを徹底的に知らなければなりません。そうでなければ、自分が何かできるのだ、自分はあの人とは違うと裁き始めます。わたしもクリスチャンになり、教会の奉仕も張り切ってしていると教会の問題が見えてきて、牧師に『あの人のここが問題だ』。すると、牧師が『大嶋君、君はまだ罪人ということが分かっていない。君はもっと罪人になれ』と言われたことがあります」(大嶋重徳「神が召すとき」)

 「覚えておいてほしいのです。誰一人、自分だけの力でここまで来た者はいません。時に友人が、時に先生方が、時にご家族の方々が、みなさんに代わりのストックを渡してくれたのです。これから先も、目標に向かって走るという人生において、必ず『共に、いっしょにゴールする』という精神が私たちを生かしてくれます」(藤本満「互いに支え合って生きる」)

 「マタイ1章の系図の中にもルツは登場します。ユダヤでは本来男性の名前だけの系図なのに、マタイが記したイエスの系図には4人の女性が出てきます。しかもその中の一人がルツでした。つまり神が御子イエスを地上に送るために、この女性の生き方の中に働いていたのです。ルツは異邦人で、ラハブは売春をしていました。ユダヤ人に軽蔑されていたモアブの女が神のみ翼の陰に自分の居場所をみつけ、イスラエルの家族の中に入りこんでいくということを誰が考えていたでしょうか。その家系 からイエスがお生まれになります。 この神の王国の中にルツが含まれたように、わたしもあなたも含まれているのです。神はいつでもわたしもあなたも喜んで迎えてくださいます。それこそが神の驚くべき恵みです」(ジョナサン・ラム「神の驚くような恵み」)

 本書について、牧師の濱和弘氏は『本のひろば』誌で「もとより、ケズィックの説教は、キリスト者個人の霊性を養い、個人の変革を図り、敬虔な生き方に導くことに中心を置く。しかし、今回の説教は、神の国の視点から語ることで、さらに強く、神の国民としてこの世の中で具体的に生きることへの自覚を促すものである」としながら、本書を「キリストの真実に溢れた肥沃な霊の糧の地である」と評する。

 パンデミックによって暴かれた世界の不確実性と死の現実。本当の希望はどこにあるのか。不安を紛らわす一時の鎮静剤ではなく、心の奥底から尽きない泉を掘り起こしたい。

【1,430円(本体1,300円+税)】
【ヨベル】978-4909871596

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