【雑誌紹介】 慈愛の想像力が広がるか 『福音と世界』7月号

 「特集=空になること(ケノーシス)の革命」。ヨーロッパ中世史を専門とする池上俊一(東京大学名誉教授)が「中世民衆宗教運動における〝空になること/ケノーシス〟」の中で言う。

 「受肉におけるキリストの自己無化、彼を死にまで追いやった神の意志への自覚的な服従を意味する『ケノーシス』が、神学者たちの熱い注視を集めているという。その理由のひとつは、現代科学で議論されている創発的進化の複雑性や自然の自己組織化傾向が、神の強制力よりも自己無化する神の愛にもとづく宇宙のヴィジョンによりふさわしいからだろう」

 「他方で現在、高度資本主義の中での地球環境の破壊に繋がる大量消費、貧富の格差拡大などのさまざまな難問が生じていて、キリスト教徒として未来への責任、自然への責任をどう考えるか、との反省からも『ケノーシス』論が盛り上がっているのだろう」

 「キリスト教会は、高度資本主義の下での自然の収奪や環境破壊、冷戦後もつづくナショナリズムの暴走やたえざる衝突・戦争に対しては無力である。……自らが謙遜で従順となり、モノ・富に執着せず、キリストの中で互いに愛に結ばれる、いわば無教会=霊的教会の理念の力により、衣食住・安全など生存に基本的なものが欠如している遠くの他者への関心を高めるという、そうした地球規模で慈愛の想像力が広がっていけば、画期的なことだ。そしてそれをマスコミに煽られた非日常的でごく一過性の態度に留まらせず、日常に根付かせていくことが大切だろう」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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