【雑誌紹介】 受けた苦難を口に出せずに… 『信徒の友』8月号

 戦後77年、次世代へと残したい言葉を5回にわたり掲載するシリーズ「あの頃を知る者として」。1回目は1934年生まれの谷川順子(青戸教会員)による「封印してきた記憶」。

 「ロシアとウクライナの激しい戦いを連日見せられ、私の幼い頃を思い起こす。焼きついて消えないあのむごい戦争の思い出が私にはある。今、私が体験したことを伝えねばならないと筆をとった」

 「国の命令で子どもたちは地方へ疎開することになった。姉は父の里である淡路島に、私は広島あき県安芸郡府中町にある母の妹の家に疎開した。……府中という町は、広島市から山一つの所にあり、1945年8月6日原爆投下の夜、被爆者の群れが連なって逃げてきた。……病院のトイレの窓から霧のような黒い雨が、どんどん入って来た。異様な雨を、この私の眼はしっかり覚えている」

 「しばらくして、母が私にこう言った。『ここを出よう。淡路島のお父ちゃんの田舎へ行こう……』。またその時、厳しく私に言い聞かせた。『広島から来たとは、口が裂けても言うのではないよ。私たちは大阪から焼け出されてきたと言うのだよ』。その意味するところ、被爆者に対する偏見と差別は私も嫌というほどわかっていた」

 「1960年に出産した時、出血多量となり、医師から原爆の後遺症であることを指摘された。その時、初めて広島にいたことを口にした。……まるで罪を犯した者のように口をつぐみ封印した人が、世界にどれだけいるだろう。……受けた苦難を、口に出せない人を作り出すのが戦争だ。戦争をしてはいけない。戦争を知る者として、強く訴える」

【600円(本体545円+税)】
【日本キリスト教団出版局】

書籍一覧ページへ

TO TOP