【書評】 『るるぶ エヴァンゲリオン』 JTBパブリッシング 旅行ガイドブック編集部 編

 『地球の歩き方』が「月刊ムー」などと異色コラボを展開し気炎を吐いているが、老舗ガイドブック『るるぶ』も負けてはいない。JTBムック『るるぶ エヴァンゲリオン』が刊行され話題を呼んでいる。

 「エヴァンゲリオン」(以下、「エヴァ」)は、1995年にテレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』が放送されるや絶大な人気を博し、97年から98年にかけて劇場版が3作公開。2007年から12年にかけても『ヱヴァンゲリオン新劇場版』3作が公開され、21年には最後となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開された。「エヴァ」シリーズには聖書やキリスト教に関連するワード・エピソードが散りばめられているため、キリスト教的観点から考察されたりもするが、世界観自体には共通性がなく、そのような用語は作品のモチーフとして使われているに過ぎないという見方が大勢だ。

 本書では、まず冒頭に「ゆかりの地 訪問のルール」が掲げられ、アニメ聖地などを訪れる際の注意事項を提示。続いて、これまでの「エヴァ」シリーズのストーリーと登場人物を解説し、見逃した作品があっても話題についていけるよう配慮している。

 『るるぶ』ならではの切り口は、「エヴァ大好き芸人・椿鬼奴が行く!カヲルと妄想旅行in箱根」など、実際に「エヴァ」のモデル地となった箱根を散策したり、旅行気分を味わえたりできるコンテンツ。作中で箱根は、首都の移転先として建設された「第3新東京市」なのだが、マップ上に綾波レイの部屋(零号機パイロットが住む集合住宅)や主人公・碇シンジが在籍する中学校がピン留めされている。「第8の使徒 落下地点」(エヴァ3機が受け止めた)や「サードインパクト発生地?」(初号機の覚醒により異変が始まった)などの地点にもピンが打たれ、もちろんそれらは架空のアバウトな印に過ぎないのだが、ファン心理を刺激する。

 箱根ロープウェイから、「ネルフ本部はあの辺りか」とピラミッド型の建物と地下施設を幻視したり、箱根登山鉄道に乗車しながら「第4の使徒の攻撃で被災したのだったな」と感慨にふけったりしてもいい。『るるぶ』には営業時間と料金、駐車場の有無も掲載されているので、スムーズに名所をめぐり作品世界に没入できる。箱根湯本駅構内にあるエヴァグッズ専門店で入手できる限定アイテムも見逃せない。浴衣姿のレイ、アスカがプリントされた手ぬぐいや、入浴剤「ねるふのゆ」など、温泉地であることを生かした商品開発にも力が入れられている。

 初期の「エヴァンゲリオン」世代にはなじみが薄いかもしれないが、浜松(静岡県)や宇部(山口県)も「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の舞台となっており、浜松ではレイと、宇部ではマリと1日妄想旅行ができる。エヴァをきっかけに現地を訪れ、天竜二俣駅の見学ツアー(毎日開催)に参加したり、秋芳洞の地底探検を楽しんでみたりするのも一興だ。従来、作中に登場した場所だけに留まりがちであった「聖地めぐり」のフィールドが、ガイドブックの媒介で、その地域の魅力発見や観光振興にまで広がっている。

 本書の巻末には、「旅先でつぶやきたいエヴァ名言」。一部を紹介しよう。

「宿で目覚めたときに…

 『知らない天井だ』byシンジ(序)

 感動的な景色を見たときに…

 『ごめんなさい。こういう時、どんな顔をすればいいのか、わからないの』byレイ(序)

 温かいもてなしを受けたときに…

 『何でみんな、こんなに優しいんだよ!』byシンジ(シン)」

 長年愛されてきたシリーズであるため、ファン層が親子2世代にわたるケースもあるだろう。親世代と子世代ではハマったキャラクターや名場面が異なるかもしれないが、本書の情報がそのギャップを埋めてくれる。家族・友人とゆかりの地へ旅立てば、心のシンクロ率は無限大!?

【1,430円(本体1,300円+税)】
【JTBパブリッシング】978-4533150289

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