【書評】 『大災害の神学 東日本大震災国際神学シンポジウム講演録』 藤原淳賀 編、アリスター・E・マクグラスほか 著

 3・11、津波、原発事故、感染症、地震、戦争――。「大災害」後の日々を私たちはどう生きたら良いのか。苦難に満ちた現実を目の当たりにしながら、神の国の希望に向かってどう歩めるのか。教派を超えて集まった神学者、大司教、牧師、伝道者たちの真摯な取り組みと希望へのメッセージ。

 東日本大震災直後、米国フラー神学校、聖学院大学総合研究所、東京基督教大学、災害救援キリスト教連絡会の主催で始まった「東日本大震災国際神学シンポジウム」第7回の内容を収録したもの。2022年2月に「いかにしてもう一度立ち上がるか――これからの100年を見据えて」とのテーマで、アリスター・E・マクグラスをはじめ、神学者、大司教、牧師、宣教師が講演した。

 なぜ神が大災害をお許しになったのか。この痛みと苦しみの中で私たちは、日本の教会はいかに応答するべきかという問いをもとに、東日本大震災から11年経ち、コロナ禍から2年が過ぎ、ロシアのウクライナ侵攻に揺れる今改めて「大災害の神学」を考える。

 マクグラスは、苦難を机上の神学のみならず信仰としてどのように捉えるのか、大震災、パンデミック、啓蒙主義的世界観に対する持論を展開。「東日本大震災を単に、キリスト教の枠組みの中で悪はどう位置づけられるのか、という視野から考えるだけでは短絡的です。ここで問われるのは単に、悪や苦しみがこの世に存在することで神の存在を信じられなくなるかどうか、ということだけではありません。もっと深い課題があります。それは私たちが苦しみにどう応答すればよいのか、将来起こるかもしれない似た災害に対応できる者となるためにどうすればよいのか、といった問いです」(アリスター・E・マクグラス『回復と再生――災害に対するキリスト教的応答の考察』より抜粋)

 プロテスタント「主流派」と「福音派」からの提唱で始まった同シンポジウムだが、第2回以降はカトリックも交えながらより広い働きへと広がっており、カトリック教会の震災支援の取り組みも紹介されている。「災害からの復興の主役は私たちではないからです。主役は地元の人たち、そこで生活を営んでいる人たちです。私たちの活動は、地元で生きる人たちが、いのちを生きることにあって『展望と希望を回復』してもらうために出会う『友人や兄弟姉妹』の役割であって、私たちの自己実現ではありません」(菊地功『カトリック教会における東北の大震災後の取り組みと、この2年間の感染対策』より抜粋)

 この世界の苦難にどう寄り添うのか、パンデミック下で問われる教会の意味、「死の陰の谷」という現実を歩むキリスト者の希望、分からない現実の中で神の御心を見ようと目を凝らすこと、出会った者の責任、弱さの中で出会われる神。「大災害をどう考えるのか」という大きな共通点を持ちながら、それぞれの視点、経験、神学、思いからあふれ出る稀有なメッセージでありながら、同時に神学的考察ともなっている。

【1,980円(本体1,800円+税)】
【キリスト新聞社】978-4873958057

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