【雑誌紹介】 日常的に綻(ほころ)びを繕う人に 『BIBLE&LIFE 百万人の福音』1月号

 大頭眞一(日本イエス・キリスト教団明野キリスト教会、京都信愛教会牧師)が相談室長を務める連載「焚き火相談室」。「キリスト教って実際のところ社会の役に立ってる?」との問いに、フランス文学者で武道家の内田樹(神戸女学院大学名誉教授)が答える。

 内田がユダヤの世界に関心を持つきっかけとなったフランスの哲学者、エマニュエル・レヴィナスの文献を読んでいちばんつ胸を衝かれたのは、「一神教信仰は成人の宗教であり、子どもには担うことができない」という命題だったという。

 「第二次大戦中にホロコーストで六百万人のユダヤ人が殺されました。戦後、生き残ったユダヤ人の若者の中には、『神はユダヤ人の迫害に天上的な介入をしなかった』ことを理由に棄教する者が出ました。それに対してレヴィナスはこう説きました。『あなたたちはこれまで何を信じていたのか。善行をすれば恵みを施し、悪行をすれば処罰を与えるシンプルな勧善懲悪機能のことを神と呼んで雲の上に飾っていたのか。それは違う。創造主がその名に相応(ふさわ)しい神徳を備えているとすれば、それは神の支援なしに地上に正義を実現できるほどに成熟し得る人間を創造したことである。神なき世界を神を信じて生きることができる人間を創造したことこそが創造の奇跡なのだ』……一神教信仰とは『神なき宿駅』を歩み続けることです。神の支援抜きで神の意思を地上に実現できる人間たろうとすることです。これは成熟した大人だけが信じることのできる宗教です」と。

 「クリスチャンが世界の破れを繕うという意味で、キリスト教は役に立っていると思われますか」という大頭からの質問に、内田は「大切なのは『役に立つ』ことより、『ミッションを果たす』ことだと考えればよいのではないでしょうか」と答える。

 「堤防に小さな穴が空いていたら、見つけた人が小石を詰めておく。それで次の台風の時に決壊せずに済んで、たくさんの人の命が助かったという場合、その人の功績は誰も知らない。本人でさえ自分が人を救ったことを知らない。……自分に個人的なミッションがあると感じた人は、綻びがあったら、綻びを繕う。別に誰かの評価を期待してそうするわけではない。だから感謝されることもないし、自尊感情を満足させることもない。でも、綻びを繕う仕事を日常的に、淡々と、当然のように行うのがよき宗教人なんじゃないですかね」

【618円(本体562円+税)】
【いのちのことば社】

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