【雑誌紹介】 「観客たち」の内面問う人文学 『福音と世界』4月号

 特集「戦争と破局」。田島卓(東北学院大学文学部総合人文学科准教授)が「旧約聖書と破局」と題して、ロシアによるウクライナ侵攻について論じている。

 「このいわゆる『新しい戦争』において、問われなければならない新たな登場人物が、『画面のこちら側』にいる『戦争の観客たち』という不気味な存在者たちであり、彼らの内面にある領域が戦場であるという点である。そして、その内面を批判・反省するという意味において、人文学に課せられた使命は実は思いのほか大きいのかもしれない。『新しい戦争』においては『観客たち』は傍観者ではあり得ず、むしろ事柄の帰趨について証言を求められた当事者であり、正義が実現するかどうかについて『観客たち』の振る舞いは(たとえば、支援を行うという世論が形成されるか否かという意味で)無視できないからである」

 「さらに、より重要なことは、いつかこの戦闘が終結した後で、平和を保ち続けることができるかどうかは、この『観客たち』の振る舞いにかかっているが、この『観客たち』の内面、つまりは思想を問うことは優れて人文学の課題であるからである」

 「確かに人文知は現実の世界に対して後れを取る。だが、戦乱の後に残されるものを視座に収めることは人文知が為さねばならないことでもある。そうした意味で、度重なる戦争を生き延び、書き継がれてきたテクストにこそ、我々が向かい合うべき問題の一端が示されている。そのようなテクストとは、旧約聖書に他ならない」

 「聖書テクストの証言の傍らに、もはや言葉を発することのない無数の犠牲者たちの十字架の痕跡があるという畏れとともに、常にすでに生き延びてしまっている私たちはこの証言を受け取らなければならない」

 「この証言の前で、問われ、裁かれているのは私たち自身である」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

書籍一覧ページへ

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘