【書評】 新装改訂版『脱会 今こそ知っておくべき統一協会の実像』 神保タミ子

 統一協会問題が世間の耳目を集めてから、もうすぐ1年が経とうとしている。政権与党との蜜月、多額の献金、宗教2世、合同結婚式など、さまざまな角度からの議論、検証が求められている。

 1人の女性による「入信」から「脱会」までを克明に記録した本書。彼女の脱会を最後まで援助した著者は、カルト問題の専門家ではない。だからこそ、そこで語られる生の声は読者に深い考察をもたらし、カルトの問題が私たちの生活といかに深く関わっているかを明らかにする。ページを読み進めるごとに痛感するのは、この問題の根深さだ。

 事の発端は些細な会話からだった。被害女性は元々プロテスタント教会へ所属していたが、ある時「体調が悪い」とのことで退会する旨を著者に明かす。しかし、話のつじつまが合わないため詳しく尋ねると、実は統一協会の勧誘を受け、そちらへ転会するという。

 著者によると統一協会は、それぞれの節目(進学や就職、結婚など)で精神的に不安定なタイミングを把握し、勧誘するという。また統一協会信者であると気づかれないために、あらゆる職業を用いて近づこうとする。気づけば統一協会主催のパーティーや物販会などに参加させられ、徐々に入会を迫られるようになる。

 そして、一度入会すると退会しにくいシステムを採用。ビデオセンターや講習を通して徹底的に統一協会の思想を刷り込ませ、その後日常生活のすべてに報告・連絡・相談が義務づけられ、結果的に自己判断能力が低下するのだという。

 著者は、被害者の「人格回復」こそが救出にとって重要だと指摘する。ある牧師は、彼女の救出のために「拉致監禁をすべきだ」と本気で主張した。しかし、それでは協会側の勧誘と何ら変わらない。あくまでも大切なのは「目に見える救出」(例えば協会の外へ出る、そのような環境から去る)と同時に「目に見えない救出」(心のケアなど)であり、特に後者が達成できない場合、また統一協会へと戻る可能性も十分に考えられる。専門家への相談と、経験者への聞き取り調査の繰り返しが、救出を抽象的なものから具体的なものへと変化させると。

 何を拝み、どんな教えを信じるのも個人の自由。しかし、その教えが時に人間の人格、尊厳を歪めることになれば、果たしてそれは「宗教」たり得るのか。そして、同じ問いが他でもない「正統」を標榜するキリスト教をはじめとする、既存の「伝統宗教」にも投げかけられていることは言うまでもない。

【新刊】 新装改訂版『脱会 今こそ知っておくべき統一協会の実像』 神保タミ子

【1,650円(本体1,500円+税)】
【キリスト新聞社】978-4-87395-820-0

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