【書評】 『はじめての聖書物語 ビジュアル版』 サリー・タグホルムほか、山崎正浩 訳

 聖書は豊かな物語の世界でもある。美しいイラストと解説で物語として読めるビジュアル版聖書。漢字にふり仮名がふられているため小学校高学年以上であれば問題なく読めるが、詳しい解説で大人にも対応する内容になっている。旧新約聖書から約130のストーリーをピックアップし、各場面を描いた世界の名画とともに紹介。聖書の物語世界に招き入れてくれる。

 「エデンの園 人間をつくった神(聖書では「主」と呼ぶこともあります)は、エデンという場所に人間のための庭園をつくりました。川にはきれいな水が流れ、木々の葉が木陰をつくります。まさに地上の楽園でした。〔…〕

 禁断の果実 禁断の果実は誘惑のシンボルになっています。そしてエバは、この果物を食べれば知識を得られると信じていました。聖書は、果物が何だったかは説明していません。 しかしラテン語のマールス(りんご)がマールム(悪)とにているため、禁断の果実はりんごとして描かれることが多いのです」

 「金の像 ネブカドネツァルがバビロンで王位について2年がたちました。エルサレムを征服し、多数の住民を奴隷としてバビロンに連れて来ていました。〔…〕

 夢解き ネブカドネツァル王の夢には、4つの帝国が巨大な像として現れます。これらは伝統的にバビロン(金)―上の写真はバビロンの遺跡―、ペルシア(銀)、ギリシア(青銅)、 ローマ(鉄)と解釈されています。金属は次第に頑丈なものになりますが、同様に各帝国が存続した期間も長くなっています。そして山になった石は神の国を表しています。これこそ永遠に続く王国なのです」

 新約聖書では、4福音書のうちひとつにだけ書かれた話もあれば、複数の福音書に重複して描かれているストーリーもある。福音書によって若干異なる記述で、時系列がわかりにくい場合もある。そういった箇所はひとりで聖書を読み始めると戸惑うことがあるが、全体の流れと登場人物がわかっていると、後で聖書を手に取った時にも読み進めやすい。また、現代へのつながりを知ることで知識が身につくという面があるので、聖書には書かれていない事柄に関する解説が役立つ。

 「ヨハネの誕生 マリアはエルサレム近くの山の中にある町に向かいました。親類のエリ サベトが、夫ザカリアと住んでいます。〔…〕

 ベネディクト会 ザカリアの言葉はベネディクトゥス(ザカリアの讃歌)して知られるようになりました。この名はザカリアの言葉をラテン語で書いたときの最初の部分で、『祝福あれ』という意味です。この名前をつけた重要人物は多く、ローマ教皇も大勢います。中でもヌルシアのベネディクトゥスは、529年にイタリアで修道院を創設しました。現在まで続くベネディクト会のルーツです」

 「いなくなった息子のたとえ イエスは集まった群衆に向けて、2人の息子を持つ裕福な農民のたとえ話をしました。息子のうち1人が家を出てしまいます。〔…〕

 指輪と履物 改心した息子に父親が贈った指輪と履物には、父親の『赦し』と『受容』の気持ちがこめられています。指輪を贈ったことで、この息子に雇い人以上の権威を与えたのです。また室内で履物を履けるのは、その家の家族だけでした。つまり父親は、息子が家族のもとに戻ったことを歓迎しているわけです」

 聖書を教養として知りたいと考えたり、聖書から人生の知恵を学び取りたいと思ったりする人は多いが、いきなり聖書を手に取ると、入り口でつまづいて中まで入ってこられないケースが少なくない。面白いと感じれば、誰に勧められなくても自分から読むようになる。まずは絵本を読むように多彩な物語に触れ、聖書の「面白さ」に目を開きたい。

【3,520円(本体3,200円+税)】
【創元社】978-4422143965

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