【書評】 『何をおいても聖書を読みなさい』 ネラン ジョルジュ

歌舞伎町でバーを開業 遠藤周作『おバカさん』のモデルになった名物神父が遺す珠玉の言葉

 

 新宿歌舞伎町でバー「エポぺ」を開店し、遠藤周作『おバカさん』のモデルにもなった名物神父、ジョルジュ・ネラン。2011年に帰天したネラン神父の遺稿集。
 『季刊エポぺ』(株式会社エポぺ発行)を含むさまざまな機関紙に掲載された同氏の文章を、「人間とは何か」「生き甲斐のありか」「キリスト教の核心」「愛する日本の方々への遺言」など七つの章に分類してまとめた。
 「人間とは何か」の章では、自由について「目的に到達する道を自分で肯定すること。愛することは目的を設定し、それに漕ぎつけること。よって自由を得ることは束縛を解いていくことではなく、愛を見出すこと」と定義した上で、罪については「自由に意識的に悪行を行うこと」であり、「キリスト教の立場からは罪は自由と責任を前提とする」と説く。
 「罪は個人的なものだけに生じるのではなく、共同体にも生じる。豊かな生活を営みながら、途上国の飢餓に目をつぶるのはそれに当たる。罪は伝染病のように社会に広がる」との指摘には、日々無意識に感じる後ろめたさの正体を指摘されたようでどきりとする。
 「キリスト教の核心」の章では、キリスト教は宗教ではないと革新的な口火を切る。「キリスト教とは、キリストという歴史上の人物が、今も目に見えない在り方とし、生きている事実を知ること。よってキリスト教は科学のような理性を全面肯定する」という氏の言は、目に見えないもの=宗教、目に見えるもの=科学という単純な二元論的構図を一蹴する。キリスト教とは本来、「心のありよう」のようなやわなものではないと指摘されたかのようだ。
 ネラン神父は60歳でバー「エポぺ」を創業。キリスト者に司牧するのではなく未信者に宣教する道を選んだ彼は、教会に男性の姿が僅かなことを憂い、多くの男性はバーでは本音を語ると知ると宣教のために開店した。
 巻末には「新宿・歌舞伎町の雑踏から見たイエスの宣教」という貴重なインタビューも。

 

 

【本体2,300円+税】
【南窓社】978-4-81650-432-7

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